研究課題/領域番号 |
14J10775
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
楠根 貴成 名古屋市立大学, システム自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 天文学 / 磁場 / 偏光観測 / 近赤外線観測 / 巨大分子雲 / ブライトリム分子雲 |
研究実績の概要 |
本研究は,巨大分子雲における磁場の存在が,大質量星による分子雲の破壊過程に与える影響について調査している.この研究目的を達成するために2つの研究,「初期磁場とブライトリム分子雲の形状の包括的研究」と「広域4色偏光観測によるHII領域の進化過程における磁場の役割の解明」を並行して行っている. 「初期磁場とブライトリム分子雲の形状の包括的研究」:研究計画通り4月に南アフリカ天文台にて近赤外線偏光観測を行った.この観測により,研究対象天体である24つのブライトリム分子雲全てのデータ取得が完了した.これらのデータを解析しまとめたものを学会・研究会にて発表した.現在,成果をまとめた論文を執筆中である.また,研究を遂行する途中で発見したブライトリム分子雲SFO74のユニークな磁場構造に関する論文が,英文雑誌The Astrophysical Journalへ投稿・査読後,掲載された. 「広域4色偏光観測によるHII領域の進化過程における磁場の役割の解明」:本研究の目的は,巨大分子雲が,生まれた大質量星によって破壊される段階(HII領域形成段階)の初期と後期の天体の磁場構造を調べることで,HII領域の進化に与える磁場の影響を明らかにすることである.そこで私は2つの天体Vela C分子雲,M16に注目している.本年度は,南アフリカ天文台での観測によるデータ取得が主な計画内容であった.Vela C分子雲の観測は天候に非常に恵まれたため,予定していた観測領域を大幅に上回る領域を観測することができた.一方,M16に関しては計画していた7-8月に観測時間が確保できなかったためデータを取得することができなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
並行して行っている2つの研究のうち,「初期磁場とブライトリム分子雲の形状の包括的研究」に関しては概ね研究計画通りに遂行することが出来た.「広域4色偏光観測によるHII領域の進化過程における磁場の役割の解明」に関しては,本年度は観測によるデータ取得のみの計画であった.しかしながら,2つある研究対象天体のうちVela C分子雲は,計画を上回る領域(次年度に行う予定であった領域まで)を観測することができた一方で,M16に関しては,当初計画していた7-8月に観測時間を確保することができなかった為,データを取得することができなかった.以上より,(2)おおむね順調に進展している,と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
「初期磁場とブライトリム分子雲の形状の包括的研究」:前年度は計画通り研究が進んだため,本年度は変更することなく計画書通り行う.共同研究者であるKent大学のMiao氏に磁場を考慮した数値計算を依頼し,観測結果と理論モデルの比較・議論を行う.現在,この研究に関する論文を執筆中であり,なるべく早い時期での学術論文投稿を目指す. 「広域4色偏光観測によるHII領域の進化過程における磁場の役割の解明」:前年度において,Vela C分子雲を計画よりも多くの領域に渡って観測することができたが,一方でM16は全く観測することができなかった.そこで,本年度Vela C分子雲に割り当てる予定であった観測時間を,M16に当てることで研究計画の修正を計る.したがって,観測は計画書通りの4月には行わず,7-8月に多めの観測時間を確保できるよう努め,本年度中のデータ取得完了を目指し,この研究成果を国内外の学会等にて発表する予定である.また,広視野の可視偏光観測装置iPolが本年度完成予定であり,可能であればこの装置を用いての観測も行い,密度の低い領域の磁場構造を得たい.
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