• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2015 年度 実績報告書

国際養子と家族形成移民の研究--「グローカル」レベルにおける共生可能性の検討

研究課題

研究課題/領域番号 14J10782
研究機関成城大学

研究代表者

芝 真里  成城大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワード家族形成移民 / 国際養子縁組 / 韓国養子 / 日本養子 / トランスナショナルな運動の展開 / マイノリティ間の連帯 / 当事者性
研究実績の概要

本研究は「アイデンティティ・ポリティクス」を超克した「共生社会」の可能性について探るものである。とくに「多〈文化〉主義」を越える者としての「家族形成移民」たち、そして多元的な「共生社会」実現へ主体的に働きかける〈媒介者〉たちの検討を通して、「共生」へのポジティブな展望を導出することを目的としている。その目的遂行にあたり、国際養子および国際結婚移住者を主な調査対象者として研究を進めている。
本年度は、これまで申請者が行ってきた調査および理論面での検討を追加調査等を通して補い、また得られた知見は国際研究集会等で報告を行った。
理論面での検討について、とくに韓国から欧米へ送り出された養子たちやその家族・関係者らがこれまで展開してきた活動、母国である韓国社会に及ぼしてきた影響について、これまで参与観察やインタビューを通じて蓄積してきたデータを踏まえて、「トランスナショナルな運動展開」という視点から理論的再検討を行った。
追加調査については、上記の理論面での再検討を経て、あらためて韓国および米国での現地調査を行った。韓国における調査では、韓国養子やその関係者らが支援する未婚母の自助団体について、その活動における国際養子たちの位置づけを中心にインタビューを行った。また米国における調査では、日本から米国ハワイ州に送り出された国際養子に対するインタビューを行い、これまで調査を進めてきた韓国養子たちの動向と照らし合わせて、今後日本養子の動向を比較検討するための知見を得ることができた。
以上を踏まえ、今後は「家族形成移民」たちのトランスナショナルな活動における「当事者性」の範疇とその拡大について、とくに従来のディアスポラ運動の展開経緯を参照しつつ、多文化共生社会の実現における〈共歓〉の重要性を検討していきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度も研究はおおむね順調に進展した。理由は以下の5点である。1)申請者の研究と関連のある分野での理論の検討と整理を進めた。また実証調査として、2)韓国養子および韓国養子自助組織の関係者らを対象に追加調査を行った。加えて3)韓国社会におけるもうひとつのマイノリティ的立場にある未婚母たちの自助組織に対するインタビュー調査を行い、その活動における韓国養子たちの位置づけや協同の諸相について知見を得ることができた。そして4)これまで行ってきた理論面での検討および今後の研究の進め方について、在韓大学所属研究者に指導を仰ぐことができた。5)米国ハワイ州における調査では、日本から送り出された国際養子にインタビュー調査を行い、「日本養子」が持ちうる特殊性について知見を得た。とくに日本から送り出された国際養子の中には沖縄から送り出された養子も含まれうる点、さらにその点が「日本/沖縄養子」というアイデンティティ形成における複雑なゆらぎを起こしうる点について興味深い知見を得た。6)以上の知見については、国際社会科学連盟年次大会などの国際研究集会での報告内容等に順次反映した。その際、「韓国から欧米へ送り出された国際養子たちが、自助活動をグローバルに展開する中、それぞれのローカル・レベルでの問題意識に差異が見受けられる」点、そして「韓国養子たちが越境的に広げ続けている自助組織のネットワークを活用し、母国・韓国が抱えていると韓国養子たちが感じている社会問題(国際養子縁組や未婚母に対するスティグマや社会福祉制度の不備)を改善すべく、他のマイノリティ的立場にある人々と連帯しつつ韓国社会へと働きかけを試みている」点を挙げつつ、「トランスナショナルな運動の展開」という視点から他の報告者らと有意義な意見交換をすることができた。

今後の研究の推進方策

本年度の研究が順調に進展したことを受け、次年度はこれまで得られた知見を学会報告や学術論文等にて成果を報告し、そこで得られたフィードバックをさらに今後の研究に生かすことを目標とする。また以下の補足調査を計画している。
1)国際養子縁組関係者に対する調査(韓国養子):韓国養子たちのグローバル・レベルにおける活動と今後の方向性を確認するべく、韓国養子自助組織の上部組織である "IKAA Gathering 2016"(於:韓国ソウル市)にて参与観察を行う予定である。また在韓養子自助組織や賛助組織、そして未婚母自助組織関係者らに対するインタビュー調査を引き続き行う。これらの調査を通じて、韓国養子たちが送出国である韓国と受入国である欧米各国という〈場〉を移動しつつ、そしてその立場を変容させつつ取り組んでいる〈グローカル〉な社会運動の様相を捉えることを目指す。また韓国養子をとりまく人々(配偶者や子ども等)が、国際養子たちの活動にいかなる想いを持ち、いかなる形で参画しているのか、さらには国際養子たちの記憶をどのように引き継ごうとしているのか、という点についても調査・検討したいと考えている。
2)国際養子縁組関係者に対する調査(日本養子):日本から送り出された在欧米国際養子に対するインタビュー調査を行い、これまで十分に検討されてこなかった「日本養子」の〈位置づけ〉について検討を進める。そして「日本養子」と近接しうる「アメラジアン」にも着目し、その〈位置づけ〉について先行研究を参照しつつ調査を進め、日本養子の検討に反映させていきたいと考えている。
3)国際養子に関する検討と並行して、日本における「家族形成移民」、特に戦争/震災孤児や国際結婚移住者を支援する団体に対する調査も継続して行う。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件) 図書 (2件)

  • [学会発表] Transnational Advocacy Networking and Social Transformation in Homelands: A Case Study on International Adoptees from East Asia2016

    • 著者名/発表者名
      Mari Shiba
    • 学会等名
      Transnational Activism and Social Innovation in East Asia: Social Movement beyond Borders. International Research Conference in the University of Hawai’i at Manoa
    • 発表場所
      Honolulu, HI, U.S.A.
    • 年月日
      2016-02-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Transnational Solidarity for Social Transformation in Glocalized World2015

    • 著者名/発表者名
      Mari Shiba
    • 学会等名
      The 22nd IFSSO General Assembly and International Conference 2015
    • 発表場所
      Tokyo, Japan
    • 年月日
      2015-05-29
    • 国際学会
  • [図書] The Consequences of Global Disasters2016

    • 著者名/発表者名
      Anthony Elliott & Eric L. Hsu (eds.), Atsushi Sawai, Sam Han, Nurul Amillin Hussain, Takeshi Deguchi, Kiyomitsu Yui, Constance Lever-Tracy, Caroline Corkindale, Kazuhisa Nishihara, Mari Shiba, Giorgio Shani, David Ip, Liyue Wu, John Cash, Masataka Katagiri, Aiko Kashimura, Midori Ito, Bob Holton
    • 総ページ数
      270
    • 出版者
      Routledge
  • [図書] 現代人の国際社会学 ・入門――トランスナショ ナリズムという視点2016

    • 著者名/発表者名
      西原和久・樽本英樹(編著)、首藤明和、郭基煥、高谷幸、人見泰弘、明石純一、鹿毛理恵、岡井宏文、新原道信、江成幸、アンジェロ・イシ、塩原良和、宮脇幸生、山口博、芝真里、小坂有資、後藤悠里
    • 総ページ数
      330
    • 出版者
      有斐閣

URL: 

公開日: 2016-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi