微小管はα/β-チューブリンダイマーの重合・脱重合により伸長と短縮を繰り返す動的な重合体であるが、様々な細胞イベントに応じた、複数のタンパク質による微小管プラス端の伸縮制御が必須である。細胞周期においては、間期には伸長・短縮期に加えて、ほとんど伸長、短縮をしない休止状態を含む3つの状態をランダムに繰り返す様子が観察される。一方、分裂期に入ると伸長速度やカタストロフ頻度が上昇し、より動的になることが知られている。これまでに試験管内実験系で各制御タンパク質の分子活性が逐一調べられてきたが、いまだに間期の3状態や、分裂期進入時に見られる、より動的な状態への転換を再現できていない。 今年度は、ショウジョウバエ由来のチューブリンおよび5つの微小管制御因子を用いて微小管動態の試験管内再構成を行った。興味深いことに、5つの制御因子が存在する条件下では、間期に見られるランダムな3状態の遷移が再現された。また、各因子を除去する実験を行ったところ、あるひとつの因子を除去すると休止状態がほとんど認められなくなったことから、この因子が動的な微小管に休止状態を誘発するのに必須の因子であると結論した。保存された5つの因子が、細胞内の微小管動態を生み出す中心的なプレイヤーであることが示唆された。
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