本年度は、前年度に得たHardy関数の高階導関数の平均値の結果を拡張し、離散的な平均値について考察しました。 Riemannゼータ関数の平均値では、連続的な平均値については比較的簡単に(つまり、何も仮定せずに)計算できる事も多いのですが、離散的な平均値になると急激に難しくなり、Lindelof予想やRiemann予想などの大予想、もしくはL関数の予想など、様々な予想を仮定しないと計算することが出来ない事が知られています。特に、Riemannゼータ関数とその導関数の離散平均値は、ランダム行列の理論と関わりがあり、Rudnik-Soundararajanの手法など、様々な方法が提案されています。 上記の事実や研究をふまえた上で、本年度は、Hardy関数の高階導関数の平均値を計算しました。結果的には、Riemann予想を仮定する事で、全てのHardy関数の高階導関数の離散平均値を計算する事が出来ました。証明には、昨年度の研究結果とGonekの平均値の定理を用います。昨年度と今年度の結果をあわせると、Hardy関数の高階導関数の平均値がある程度分かったと言えると思います。 Hardy関数の研究は、Riemannゼータ関数の解析のみならず、ほかの分野とも関わりがあると思うので、様々な分野との関連を追求できれば良かったですが、実際に研究してみると困難な箇所も多かったので、様々な分野との広がりと言う意味では、さらなる研究が必要になってくるのだと思います。
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