研究課題
タンパク質は消化管においてペプチド・アミノ酸へと分解され、腸上皮細胞に存在する膜タンパクであるペプチド・アミノ酸輸送体を介して体内に取り込まれる。これらの輸送体の存在量および輸送活性は栄養の利用効率、さらには成長に影響すると考えられる。本研究は、魚類のアミノ酸輸送体遺伝子に着目して腸管のアミノ酸吸収機構を明らかにするとともに、それらを指標として成長効率化に応用できる知見を得ることを目的とした。本年度はまず、モザンビークティラピアの腸に発現するアミノ酸輸送体遺伝子の網羅的なスクリーニングを行った。ティラピアのSolute carrier family遺伝子のうち、ゲノムデータベースを用いてアミノ酸輸送に関わるもの97種を対象として選び、RT-PCRおよびリアルタイム定量PCRによる組織別発現解析により腸に特異的かつ高い発現を示すものを13種に絞り込んだ。さらに、in situ hybridizationにより腸組織における発現細胞を確認したところ、8種については腸上皮細胞特異的な発現が見られ、残りの5種についても現在解析中である。次に、成長とアミノ酸吸収機構の関係について明らかにするために、淡水と海水飼育における比較を行った。モザンビークティラピアは淡水に比べて海水中で成長率が高いことが知られており、この高成長形質と腸のアミノ酸吸収機構に何らかの関係があることが予想される。そこで、淡水および海水で長期間飼育した個体について腸を前後軸に沿って5箇所に分割し、それぞれの部位におけるアミノ酸輸送体遺伝子の発現動態をリアルタイム定量PCRにより解析した。その結果、5種について淡水飼育群の腸前部で発現が高いという結果が得られた。成長率の低い淡水において、低栄養状態に対する応答としてアミノ酸輸送体遺伝子の発現を高めていることが予想されるが、詳細な機構の解明については今後の課題である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
General and Comparative Endocrinology
巻: 206 ページ: 146-154
doi:10.1016/j.ygcen.2014.07.020