研究課題/領域番号 |
14J10935
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森本 光 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 人文学 / 歴史学 / 西洋史 / 中世史 / ドイツ / 国制史 / 宮廷 |
研究実績の概要 |
本研究は、人的結合国家から領邦分立体制への過渡期とされる12世紀ドイツにおいて国王宮廷が果たした役割について、伺候した側である諸侯に焦点を当てることにより、従来の王権を中心とした宮廷研究と異なる、新たな側面を明らかにすることを目的としている。 今年度は当初の計画通り、バーベンベルク家とヴィッテルスバッハ家に焦点を当て、王コンラート3世治世(1138-1152年)から皇帝フリードリヒ1世治世(1152-1190年)における、両家門による国王宮廷への伺候の傾向(伺候の頻度・国王宮廷の場所・本拠地からの距離)の変化と、彼らの政治的動向について研究し、それらの関係について分析を行った。その成果として、従来の研究では強い相関があると考えられてきた、諸侯による伺候の傾向と、諸侯の領域政策の進展の関係について、家門ごとに大きな違いがあることを明らかにした。更に伺候を個別的に、その都度の政治的文脈の中に位置づけて分析することにより、従来指摘されてきた国王宮廷の役割と異なる、王権と伺候した者の関係を修復し、また伺候した者にとって不都合な王権の政策を抑制するといった側面が明らかとなった。このことは、伺候する諸侯の側も、積極的に国王宮廷を政治的に利用していたことを表している。次年度には上記の二家門とまた異なる政治的状況に置かれた、他の諸侯に関する個別研究を予定しており、今年度の研究成果と比較することで、更なる研究の進展が期待できる。 また今年度は指導委託により4ヶ月間、ミュンヘン・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学にて研究を行った。その間、史料の調査・収集を行うとともに、現地の研究者たちから本研究に関して指導を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は申請時には予定していなかった指導委託により、ミュンヘン・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学にて長期間研究を行う機会を得た。このことは、まず本研究のための一次史料および二次文献へのアクセスを非常に容易にした。特に日本で目にすることが難しい、多くの一次史料を入手することが出来たことは、今年度のみならず、今後の研究の進展のための大きな成果であった。また次年度に研究対象として予定している諸侯に関しても、研究の準備を進めることができた。 更に同大学で現地の研究者から本研究に関して指導を受け、私がこれまで重要視してこなかった、諸侯が伺候していない小規模な宮廷の重要性や、後世の偽造史料の活用方法などを学ぶとともに、本研究において比較対象となりうる他の諸侯を提示された。特に最後の提示は下記のように、今後の研究の推進方策に影響を与えている。 以上の理由により、研究課題の遂行は当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
申請時には次年度の研究対象として、ズルツバッハ家とアンデクス家を設定し、今年度に焦点を当てたバーベンベルク家とヴィッテルスバッハ家に関する研究成果と合わせて比較することを予定していた。しかし調査を進める中で、一次史料および先行研究の乏しさから、これらの家門に関して、今年度の研究対象であった二家門と同等の研究成果を挙げることは難しいとの結論に至った。 そのため、同様に政治的立場が大きく変動したバイエルンの聖界諸侯に目を向け、研究対象としてザルツブルク大司教、フライジング司教、パッサウ司教を設定することとした。彼らを研究対象に加えることで、当初の計画よりも多角的に、当時の国王宮廷が果たした役割を分析することができるようになる。なお今年度の史料調査・収集により、彼らに関する主だった史料は収集しており、計画の変更による進捗状況への影響は小さい。
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