研究課題/領域番号 |
14J10957
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平出 恵利華 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 食物アレルギー / 皮膚炎症 / 腸管 |
研究実績の概要 |
OVA23-3マウスは、卵白アルブミン(OVA)に特異的なT細胞抗原レセプターを持つトランスジェニックマウスである。卵白食(EW)の経口摂取に伴い、腸炎症、体重減少、Th2応答、IgE抗体価の上昇が誘導される食物アレルギーモデルである。本研究ではさらに、OVA23-3マウスがEW経口投与後のOVAの皮膚接触によりTh2型の食物アレルギー性皮膚炎を発症することを明らかにした。この皮膚炎は、CD4+T細胞が皮膚に浸潤する特徴を持つ。本年度は、どのように皮膚にCD4+T細胞が集まり、皮膚炎が誘導されるのかを解析した。その結果、腸間膜リンパ節(MLN)と脾臓(SPL)CD4+T細胞において皮膚ホーミングレセプターであるCCR4とE-セレクチンリガンドの発現が認められ、食物アレルギー性皮膚炎発症時には、皮膚所属リンパ節(sDLN)のみならずMLNおよびSPLからもCD4+T細胞が皮膚に移動する可能性が示唆された。 次に、全身の細胞解析に適したKikGRマウスを用いて、CD4+T細胞がどのように全身を移動し、食物アレルギー性皮膚炎が発症するのか解明することを目指した。KikGRマウスは、紫色光を照射すると、緑色から赤色に光変換するKikGRタンパク質を全身に発現する。まず始めに、OVA23-3マウスとKiKGRマウスを交配してOVA-KikGRマウスを作製し、OVA23-3マウスと同様に食物アレルギー様の症状を呈するかどうかを解析した。その結果、EWの経口投与に伴い、腸炎症、体重減少、Th2応答が誘導され、EW経口投与後の皮膚接触により食物アレルギー性皮膚炎が誘導された。 次に、OVA-KikGRマウスを用いて、食物アレルギー性皮膚炎誘導時に、実際にMLNから皮膚に細胞が移動するかどうかを解析した。EW経口投与期間中に、MLNに紫色光を照射して赤色に光変換することで細胞をマークし、OVA皮膚接触後に皮膚細胞を解析した。その結果、皮膚細胞中にMLN由来細胞が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
OVA23-3マウスを用いた解析に関しては、食物アレルギー性皮膚炎発症時には、皮膚のsDLN以外にもMLNやSPLからCD4+T細胞が移動する可能性があるという新しい知見を見出すことができ、期待以上の進展があったと考えている。 またOVA-KikGRマウスを用いた解析に関しては、今年度は全身を循環する細胞を解析する実験系の立ち上げを目標としていた。MLNに紫色光を照射することにより細胞をマークし、MLNから移動した細胞を追跡することが出来たため、実験系を立ち上げることが出来たと考えられる。さらに、実際にMLNから皮膚に移動する細胞を捉えることが出来、期待以上の進展があったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
I. 食物アレルギー性皮膚炎発症時にMLNおよびSPLから移動する細胞の解析 引き続きOVA-KikGRマウスを用いて、食物アレルギー性皮膚炎の発症機構の解明を目指す。特に、食物アレルギー性皮膚炎誘導時にCD4+T細胞がsDLNのみならずMLNおよびSPLから実際に皮膚に移動しているかどうかを解析する。また、CD4+T細胞が全身のリンパ管や血管を移動することで、食物アレルギー性皮膚炎が誘導されると考えられる。食物アレルギー性皮膚炎誘導時にMLNやSPLにとどまるCD4+T細胞と、MLNやSPLから他のリンパ節や組織に移動していくCD4+T細胞の違いを解析することで、どのような表現型のCD4+T細胞が全身を移動することで食物アレルギー性皮膚炎が誘導されるのかを解析する。 II. 食物アレルギー性皮膚炎発症時に皮膚から移動する細胞の解析 食物アレルギー性皮膚炎誘導時に皮膚から移動する細胞の解析を行う。特に、皮膚に存在する樹状細胞がsDLNのみならずSPLやMLNに移動して、CD4+T細胞に皮膚ホーミングセレプターを発現させている可能性が考えられるため、皮膚に紫色光を照射し細胞を赤色にマークし、一定時間後にMLNやSPLに皮膚由来の赤色の樹状細胞が存在するかどうかを解析する。
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