OVA23-3マウスはOVA(卵白アルブミン)に特異的なT細胞抗原受容体遺伝子トランスジェニックマウスである。これまでに、OVA23-3マウスに卵白含有飼料(EW)を自由摂取させると、体重減少、腸炎症、IgE抗体価の上昇およびTh2応答が誘導されることがわかっていた。本研究では、このマウスにEWを経口投与後、皮膚にOVAを接触させることで、Th2型の食物アレルギー性皮膚炎を発症させることに成功した。そして、このモデルを用いて食物アレルギー性皮膚炎の発症メカニズムの解明を目指している。本年度は、OVA-KikGRマウスを用いて食物アレルギー性皮膚炎発症時の免疫細胞の動態解析を行った。OVA-KikGRマウスは、OVA23-3マウスと全身の細胞の移動解析に適したKikGRマウスを交配し、作製したマウスである。KikGRマウスは、紫色光を照射すると緑色から赤色に光変換する蛍光タンパク質KikGRを全身に発現している。そのため、特定の部位に紫色光を照射することで細胞を標識し、一定時間後に解析することで、細胞がどこからどこに移動したかが分かる。本研究では、OVA-KikGRマウスの食物アレルギー性皮膚炎発症時に、腸間膜リンパ節(MLN)に紫色光を照射し、MLNから皮膚に細胞が移動するかどうかを解析した。 方法は、EWまたは通常食であるCE2食を7日間経口摂取させた後に、2日間OVAを皮膚に接触させた(EW/OVAまたはCE2/OVAとする)。その際、6日目と8日目にMLNに紫色光を照射し、MLNの細胞を赤色に標識した。9日目にOVA接触部位の皮膚を全ての群で同じ面積になるように摘出し、KikGR-Red細胞の数をフローサイトメトリーにより解析した。その結果、EW/OVAとCE2/OVAともにKikGR-Red+ CD4+ T細胞が検出された。そしてその数は、CE2/OVA群よりもEW/OVA群で多かった。以上のことから、食物アレルギー性皮膚炎発症時には、MLNから皮膚にCD4+ T細胞が移動していることが明らかになった。
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