研究実績の概要 |
本研究は、胎生期バルプロ酸暴露法を用いて作出された自閉症モデル小型霊長類コモン・マーモセット(VPA群)を用い、家族間の相互的社会性(kinship社会性)の定量と、gene-chipスクリーニングに基づく治療候補薬剤を用いた表現系変化の定量を目的とする。研究3年目である平成28年度は、統計的検証に必要なデータを収集し、2つの顕著な傾向を検出した。 放射性医学総合研究所の南本敬史チームリーダー、青木伊知男チームリーダーと共同で、VPA群と非暴露群の新生仔脳イメージングを行った。イメージング手法として、拡散強調画像(DTI)・構造MRIを用いた。結果、生後2日齢のVPA群7頭(4♀3♂)と非暴露群9頭(5♀4♂)において脳イメージングを行った結果、VPA群では前交連の矢状断面が全脳サイズに比して小さくなっている傾向を見出した。 また、ヒトの日常生活における社会性機能のリスク評価への応用を展望し、小型霊長類家族の日常的な音声頻度構成において、自閉症モデル仔の存在が与える影響を評価した。VPA群9仔(2♀7♂)、非暴露群7仔(2♀5♂)とその両親を対象とし、仔の離乳期を挟んだ生後1-5ヶ月齢の全音声解析を行った。結果、親和性を表すtrill callの減少、緊張を表すphee call, twitter callの増加を検出した。階層モデルを用いたベイズ推定法を適用し、ロバストな入力データに対しても傾向を比較できる枠組みを開発した結果、家族がVPA仔を含むかどうかを高精度に判定する事に成功した。 現在、これら2件についてそれぞれ論文を執筆中であり、2017年度中の出版を予定している。
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