研究課題
本研究は、CMB偏光観測を行うための望遠鏡GroundBIRDを開発し、インフレーションモデルに観測的な制限をつけることを目的としている。インフレーション起源の痕跡を検出するためには、空の広い範囲の測定が必要である。検出器は時間がたつとベースラインがドリフトしてしまうため(~10秒)、望遠鏡をいかに速く振り回せるかが鍵となる。そこで申請者は、望遠鏡を回転台の上に載せて回転させながらの観測を計画している。現在、観測サイトとしてはスペイン領カナリア諸島のテイデ観測所を考えている。2年目にあたる本年度は、GroundBIRD望遠鏡の開発と、超伝導検出器のミリ波回路部分の設計を行った。昨年度から引き続き、GroundBIRD望遠鏡、主に冷却系の開発を行った。本研究では検出器として新しい超伝導検出器であるMKIDを用いる。テスト用のMKIDを望遠鏡内部の250mKステージに設置し、光を導入した状態で、VNAを用いて読み出しテストを行った。望遠鏡の窓の開け閉めでMKIDが応答することを確認した。また、偏光板を用いた偏光測定のデモンストレーションを行った。これらは、本番用MKIDができた後に行う検出器の較正の練習としての側面もある。これと並行して、超伝導検出器のミリ波回路部分の設計も行った。本番用の検出器の開発は当初の計画から遅れており、特に手薄となっていた、ミリ波をMKIDに導入する部分の回路の図面設計を担当した。CMB偏光観測では無偏光信号を差し引くために、直交する二つの直線偏光を同時に測定する。その際の信号の交差、合成、不要モードの除去を回路上で行う。3次元シミュレータのHFSSや2.5次元シミュレータのSonnetを組み合わせ、ホーンの形状からMKIDに導入直前までの回路の設計・性能評価を行った。設計は終了し、現在は試作に移っている。
3: やや遅れている
本来の計画では、本年度は超伝導検出器の性能評価を中心に行う予定であった。しかし、まだ本番用の検出器の製作に至っていなかったため、その検出器の製作と、性能評価の準備を並行してすすめた。次年度の初めには検出器の性能評価を開始でき、約半年程度の遅れであると考えられる。
現在までに本番用の検出器の試作の段階まですすんでいる。今後はまず、その試作した検出器の性能評価を行う。すでに評価を行うための望遠鏡は製作できており、ここに導入することですぐにでも性能評価を始められる。偏光信号の応答性の評価、検出器にはいるビームの評価などを行う予定である。並行して、カナリア諸島にあるテイデ観測所との打ち合わせも進める。すでに観測することに関しては大筋合意しており、近いうちに、観測環境について、現地調査を行う予定である。
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J. Low Temp. Phys.
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10.1007/s10909-015-1420-9
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