研究課題
本研究はアジア太平洋戦争後(戦後)における日本および関係する国外の芸術運動とそれらが実際に提示された展示空間を扱う。建築史や美術史において戦後を対象とした研究はまだ緒に就いたばかりだといえるが、これまでは分野や国民国家の枠組みで個別にとらえられることが多く、同時期の造形に共通する性格や他の地域の芸術運動との関係については十分に検証されていない。そこで本研究では特に1940年代後半から1960年代の日本とアメリカ合衆国をはじめとする諸外国との国際文化交流に焦点を当て、展示空間の分析を通じて戦後日本の芸術運動における相互的な影響を考察した。平成26年度には「空間から環境へ」展(銀座松屋、1966年)に関する一連の成果について発表するとともに、博士論文『戦後日本の芸術運動と展示空間に関する研究:伝統・デザイン・環境』を東京大学に提出したが、平成27年度はその内容をより深めるため調査をすすめた。また平成27年度は特に「ヴィジョナリー・アーキテクチャー(Visionary Architecture)」展(ニューヨーク近代美術館(MoMA)、1960年)に関する成果を発表した。既往研究は1960年代を代表する芸術運動であるメタボリズムについて、発足の一つの契機となった世界デザイン会議を主に扱ってきた。だがその直後にメンバーである菊竹清訓と黒川紀章が作品を出展したこの展覧会は、これまでの研究による整理の外に置かれてきた。そこで本研究ではこの展覧会を企画したキュレーターであるアーサー・ドレクスラー(Arthur Drexler)が残した会場の写真や図面等に関する調査を行い、それらを用いてメタボリズムによる視覚的な表現とその性格がこの展覧会でどのように形成されたのかを明らかにした。この成果については2015年11月に韓国光州で開催された東アジア建築文化国際会議(East Asian Architectural History Conference)で口頭発表を行い論文が掲載された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Review of Japanese Culture and Society, Josai University
巻: 17 ページ: -
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East Asian Architectural History Conference 2015 Proceedings
巻: - ページ: pp. 827-832