研究課題/領域番号 |
14J10993
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
江森 千紘 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
|
キーワード | 卵母細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、マウスの卵母細胞の発達メカニズムに対する理解を深めるために、複数のシグナルの相互作用によって制御される卵丘細胞の発達メカニズムを解明することを目的とした。これまでに、エストロゲンと卵母細胞によって卵丘細胞内で発現が制御される遺伝子群を明らかとするために、マウス卵丘細胞での遺伝子発現についてマイクロアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析および遺伝子オントロジー解析を行った。その結果、卵母細胞は卵丘細胞でのエストロゲンシグナルに影響を及ぼして卵丘細胞機能を制御していることが示唆された。エストロゲンのシグナルは、エストロゲンと結合したエストロゲン受容体(ESR)が核内に移行して転写を制御することで伝達され、この時、ESRの転写活性は多くのESR結合因子によって制御される。したがって、卵母細胞によるエストロゲンシグナルの制御に、卵分泌因子によるESR結合因子の発現制御が関与する可能性が考えられた。そこで、エストロゲン受容体(ESR)結合因子に着目し、その発現動態、およびその制御に対する卵分泌因子の関与を解明し、さらに、機能解析を行うこととした。発現解析の結果、多くのESR結合因子の発現は、卵巣内体細胞において発現している子が確認された。さらに、発現制御解析の結果、卵分泌因子による発現制御を受ける多くのESR結合因子を同定した。次に、一部について機能解析をおこなった結果、卵丘細胞の分化や機能制御に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。現在、これらESR結合因子の発現変化が、卵丘細胞におけるエストロゲンシグナルに与える影響について卵丘細胞初代培養系を用いた解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、ESR結合因子の卵巣発達過程における発現解析は完了している。また、今回同定されたESR結合因子について、さらに詳細な発現制御の解析、および、機能の解析も行った。当初は、今年度中にトランスジェニックマウスの作製を開始する予定であったが、発現制御、機能解析において興味深い知見を得たため、その点についてさらに詳細な解析を行い、時間を要したため、トランスジェニックマウスの作製には取り掛かれなかった。しかしながら、卵分泌因子による発現制御を受ける多くのESR結合因子を同定し、一部については機能解析を概ね完了することができたことから、総合的にみておおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、予想よりも多数の卵丘細胞機能制御に関与するESR結合因子を同定することができたため、卵丘細胞において初代培養に遺伝子を導入する実験系を用いて、トランスジェニックマウスの作製前に候補因子の絞り込みを行う。この際、複数のESR結合因子がESRに結合することで機能することが予想されるので1遺伝子ではなく、複数の遺伝子の導入及び欠失を試みる。これによりその重要性が明らかとなった因子について、トランスジェニックマウスを作製し、作成され次第、卵胞発育の動態、メスマウスの妊孕性の解析などを順次行っていく予定である。
|