研究課題/領域番号 |
14J11003
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
今岡 淳 島根大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 磁気結合 / 結合インダクタ / インターリーブ / コア構造 / 巻線構造 |
研究実績の概要 |
本研究は、電力変換器の小型軽量化に適した多相インターリーブ方式に磁気結合技術を応用して、変換器内で主要な体積を占めるキャパシタやインダクタの体格低減を目的とする。対象とする電力変換器は絶縁型(共振コンバータを含む)、非絶縁型を対象とし磁気結合方式の設計方法確立(コア構造や巻線構造も含む)、さらに次世代パワー半導体デバイスを用いた高周波駆動による小型軽量化まで言及する。 本研究のマクロ視点での背景として、経済が世界規模(発展途上国含む)で発展している昨今では、電子機器に用いられる金属資源のニーズが飛躍的に向上し、結果として金属資源が枯渇するという予測がすでに立てられている。これに対して資源に乏しい我が国では希少金属を用いて構成される磁性部品の小型化(または省資源化)は、先んじて研究・開発しなければならない要素技術の一つであると考えられる。また、世界的にもこういった技術確立や実用化に向けた検討は重要な意味合いをもつものと考えられる。 平成26年度では新規磁気構造を有する積層"結合型"チップインダクタを用いた2相インターリーブ方式POL(Point Of Load)コンバータを検討した。POLコンバータは主に、今後更に世界的に普及していくポータブル機器(携帯電話やパソコンなど)に使用される。使用した半導体としては新材料パワー半導体デバイス(GaN)を用いており、スイッチング周波数は1MHzの高周波駆動とした。まず、本回路に対して状態方程式を用いて基本的な電気的動作解析を行っている。また、この結合積層チップインダクタの材料はダスト系のコアを使用していることから直流重畳特性も含めて調査をした。その結果、従来の各相独立した積層チップインダクタに比べて、インダクタリプル電流の脈動を大きく低減でき、その小型化の可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
絶縁コンバータに対しても磁気結合技術の応用について検討を進めており、体格低減の視点から優れた性能をすでに得ている。内容としては、2相化させた場合、2つのトランスを必要としていたが、磁気結合技術を応用して、単一のコアに複数の巻線を巻く構造として、磁束の共有化によるピーク磁束の低減や励磁電流高周波化を実現している。 また、従来の昇圧チョッパ回路用結合インダクタでは、磁気構造上、外側に巻き線が存在するような形となるため、漏れ磁束がインダクタ外側部分に多く存在する。こういった問題が存在するため、近接した回路構成(例えば、インダクタの近傍に制御回路やゲートドライブ回路など)を配置することができない。そのため、電磁シールドを用いた結合インダクタについて検討を進めている段階である。こういった内容を踏まえ、当初の計画以外の内容についても検討を進めているため、当初の計画以上に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、理論上スイッチング損失のない共振型LLCコンバータに磁気結合技術を適用を実施を検討している。LLCコンバータの場合、正弦波上の共振電流が、出力側の整流ダイオードを介して、全波整流された共振電流がコンデンサに流入形態である。そのため、本方式はソフトスイッチングにより電力変換効率は高いものの、一般的に回路方式としてコンデンサが大型化する傾向がある。これに対して、まず3つのステップで検討を進める。 ①多相インターリーブ化により出力側コンデンサの容量低減を検討する。 ②LLCコンバータのような共振型コンバータでは、多相化させた場合、各相の共振タンクゲインのアンバランス(寄生成分のアンバランスや品質のアンバランスにより)により、共振電流が各相でアンバランスする問題が存在する。しかしながら、LLCコンバータの場合はPFM制御するため、制御側のアプローチからこの各相の電流アンバランスの問題を解決することは難しい。そのため、トランスの結線を変更して、多相化させた場合でも電力がアンバランスすることなく効果的に平衡するような方式について検討を進める。 ③インターリーブ化および結線を変更した場合でも、多相化は磁性部品の数や体積増加を招く懸念があるため、磁気結合を応用して単一コアもしくは素子数低減を検討する。
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