研究実績の概要 |
遺伝子治療の臨床応用実現のためには、pDNAの体内動態を的確に制御する遺伝子キャリアの開発が必要である。我々は、poly(ethylene glycol) (PEG) とpoly(L-lysine) (PLys)とからなるブロック共重合体PEG-PLysがpDNAと形成するポリイオンコンプレックスミセル(PICミセル)を遺伝子キャリアとして開発してきた。特に、PICミセルの形態の制御が治療効果に与える影響を見出すべく、PICミセル内部へのpDNAパッケージングの構造制御に取り組んできた。 前年度までの研究では、種々PEG分子量X (X = 2k, 12k, 20k, 30k, 42k)、PLys重合度Yからなる一連のPEG-PLys X-Y PEG-PLysのPEG分子量とPLys重合度を用いた実験により、凝縮開始時点のpDNA上のPEG密度が高い場合にはrod状構造体、少ない場合にはglobule状構造体が形成されることが明らかとなった。PEG密度の定量的解析からrod状形成とglobule状形成の境界PEG密度が見出され、pDNAのrod状/glouble状の形成率を制御することが可能となった。これに基づき本年度の研究では、パッケージング形態の違いが実際に遺伝子キャリアとしての性能にどのように影響するかについて評価した。本年度に行った評価では、主に無細胞遺伝子発現系を用いた。この系を用いることで、細胞への取り込み効率やエンドソームエスケープ等の因子が除外され、培養細胞系を用いるより直接的に凝縮構造の違いと遺伝子発現との相関を評価可能である。遺伝子発現活性を評価した結果、globule状の形成率が高くなるにつれて遺伝子発現が低くなることが確認され、パッケージング形態と遺伝子発現に一定の相関があることが示された。
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