研究課題
遺伝子治療の臨床応用実現のためには、プラスミドDNA (pDNA)を標的細胞に確実に送達し、高効率に治療遺伝子を発現する遺伝子キャリアを開発することが不可欠である。我々は遺伝子キャリアとして、poly(ethylene glycol) (PEG) とpoly(L-lysine) (PLys)とからなるブロック共重合体PEG-PLysが、pDNAと形成するポリプレックスミセル (PM)を開発してきた。特に、PM内部へパッケージングされるpDNAの形態を制御することにより、遺伝子発現効率を向上させることに取り組んできた。前年度までに、PEG-PLysによるpDNA凝縮において、pDNA表層のPEG密度が重要な形態制御因子となっていることを明らかにし、パッケージング形態の制御によって無細胞遺伝子発現系における遺伝子発現効率を大きく向上させた。しかしながら、全身投与型遺伝子キャリアとしてPMを用いるには、未だ血中における不安定性が課題となっている。本年度は、血管内において血液の流れによって生じているせん断応力に着目し、せん断応力下でのPMの構造安定性の観点より、PMの血中滞留性低下の要因を検討した。PMへのせん断応力の負荷は、回転レオメーターを用いて行った。血管内相当のせん断応力を負荷する前後で、PMに結合しているポリマー本数を超遠心を用いた手法により定量したところ、pDNA1分子あたりに結合しているポリマー本数は、せん断応力の負荷によって減少することが確認された。さらに、せん断応力下でのPMのDNA分解酵素耐性をRT-PCRにより評価したところ、せん断応力が無い条件下と比較して、有意に低下することが確認された。以上より、せん断応力によるポリマーの引き剥がしがDNA分解酵素耐性を低下させるという一連の流れが、PMの血中安定性低下のひとつの要因となっていることを明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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