研究課題/領域番号 |
14J11010
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
辛 殷美 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 木材の特徴 / 接合部の曲げ剛性 / 略鎌継ぎ / 有限要素解析 |
研究実績の概要 |
木材の材料特徴に関する実験:木材の特徴を求めるために木材の材料実験を行った。解析モデルに適用するのを考慮して、木材の繊維方向と半径方向及び接線方向の圧縮・引張・せん断・割れに関する木材全般の特徴(弾塑性)を把握した。その結果、木材の方向によって引張と圧縮の弾性係数が類似であり、せん断及び割れが発生しやすい方向を把握した。また、連続写真を用いて行った画像解析からは試験体の加力によって変位の流れが把握できて材料特徴を有効に評価した。 木造接合部の有限要素解析に基づいた弾塑性評価①:継手がない通し貫と継手を有する略鎌継ぎについて有限要素解析を用いた非線形解析を行ったうえ、実験と比べた。その結果、実験の損傷と類似な応力を見せるうえ、実験の包絡線結果を上回る結果を示した。しかし、略鎌継ぎの中央部割裂を評価できるバネモデルを適用すること、竿車知継ぎのような様々な損傷形状が現れた継手に対する検討することが必要である。 木造接合部の力学モデル:建長寺仏殿と法堂に用いられた継手である略鎌継ぎと竿車知継ぎの耐力を明確にすることを目指した。略鎌継ぎでは加力方向による両部材のお互いの影響が異なり、竿車知継ぎでは加力方向による影響のうえ男木と女木の結束によって抵抗する形状が異なることが現れた。各継手の力学モデルから実験の破壊形状との比較・分析を行い、継手が持つ耐力を一般的に評価できるメカニズムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
木質構造のうち特に伝統的な木造建築の接合部のモーメント抵抗に関する力学的な機構を明らかにすることを目的とした研究を行った。本年度の研究では木材の材料実験を行い、従来の研究では考慮していなかった木材の引張・せん断強度に関して分析し、接合部の力学モデルに適用した。更に、画像解析によって各部の詳細な変位を明らかにし、木材の不均質性も考慮したモデル化を適切に行う提案を行いました。得られた各種の材料定数を用いて有限要素解析を行い、接合部のモーメント抵抗メカニズムを解明した。有限要素法に基づいた接合部の非線形解析と実験結果を比較検討し、比較的高い一致をみたため、今後は多様な継手仕口の形状に応用できることが期待されます。 以上の研究進行は、期待どおりでありきわめて有益な結果が得られたと評価できます。
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今後の研究の推進方策 |
実験及び有限要素解析を用いた各接合部の構造要素把握:平成26年度の接合部の弾塑性解析で行った解析に加えて、略鎌継ぎの中央部に割れのバネモデルを適用した分析から中央部の割裂が接合部の剛性に及ぼす影響を把握する。また、接合部の寸法及び材料特徴の変化による剛性への影響を実験及び有限要素解析に基づいて評価する。 建長寺仏殿と把握の水平耐力に及ぼす接合部の影響評価:以上の分析結果から、建長寺仏殿と法堂の接合部が持つ耐力を寸法及び加力方向に対して評価するうえ、建物全体に接合部の剛性を適用した挙動を把握する。
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