平成28年度は(1)入院事前審査制度、(2)時限立法、(3)コメディカルの役割、(4)医療費適正化政策史研究に取り組んだ。主たる目的と研究成果は次の通りである。 (1)入院事前審査制度研究は、戦前日本で運用されていた保険者入院事前審査制度がなぜ廃止されたのか、戦後何度か再導入が企図されたにも拘わらずなぜ実現しなかったのかという問いを明らかにすることを目的とする。研究の結果、1990年代以後、再導入が実現しなかったのは、利益や制度による説明よりも、アイディアの方がより説明力が高いことが明らかになった。以上をまとめた論文は『年報政治学』に掲載された。 (2)時限立法研究は、法の有効期限を定める時限立法が、当初の期限通りに終了しているのか否か、終了していない場合、阻害する要因は何かを明らかにすることを目的とする。時限立法のデータセットを完成させ、その特徴を整理し、日本行政学会でポスター発表した。また生存分析を行い、日本政治学会で発表した。 (3)コメディカルの役割研究は、日本と途上国のへき地保健医療政策におけるコメディカルの役割になぜ大きな違いがあるのかを歴史的に明らかにすることを目的とする。日本における医療従事者に関する政策の変遷を整理し、そこから導出される途上国への知見をまとめ、学会誌に投稿した。現在査読中である。 (4)医療費適正化政策史研究は、戦後の医療費適正化政策を概観し、検討された政策オプションや改革の阻害要因をまとめることを目的とする。研究結果は、印南一路編(2016)『再考・医療費適正化』有斐閣として出版された。
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