研究課題
本研究課題では、運動機能と視覚ワーキングメモリ (WM)、認知機能低下の関係を、行動指標、脳機能計測、介入手法を用いて明らかにすることを目的としていた。行動研究により、認知機能と運動制御機能の関係における身体性の影響が明らかになった。具体的には、手の心的回転成績は手の巧緻性と、足の心的回転成績は歩行能力と有意な相関が得られた。しかしこの研究に関しては、ほかの集団を対象とした実験とは結果が一致しておらず、参加者のサンプリングの問題が伺われた。脳画像研究として、運動機能にかかわる脳部位の同定を目指した。これまでの研究で得られた歩行機能とWMの行動的相関に着目し、歩行機能と相関するWM中の脳活動部位を探索した。実験の結果、歩行機能との相関は左前頭部で見られた。さらに、逆相関が右半球の大脳基底核で確認された。即ち、歩行成績が低い高齢者ほど高次認知機能に関わる部位である左前頭部が活動し、一方で主に運動に関連しているとされる大脳基底核が活動していなかったのである。これは、加齢研究で報告されている高齢者における補償ストラテジーと関連すると考えられた。介入研究として、運動介入がWM中の脳活動に与える影響を検討した。実験の結果、12週間の介入前後で運動群の課題成績は統制群よりも有意に向上した。着目していた脳活動については、運動群のWM中の脳活動は統制群に対して有意に減少していた。運動群は介入後、より効率的に課題を遂行できていたと考えられる。以上を本研究課題における初年度の研究実施状況として報告する。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画と比して、行動研究は予定通り終えることができた。介入研究については、予定より早く開始されたため、終了もその分早かった。その反面、fMRI研究の解析手法の習得に時間がかかり、その分国際誌への投稿や発表が遅れている。これについては来年度より積極的に行う予定である。以上のことを勘案し、おおむね順調であると結論する。
予定していた実験は終了しているため、これらを発展させた研究を予定している。当初の計画に含まれた研究については、学術誌への投稿や学会での発表を目指してまとめていく予定である。
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Journal of American Geriatrics Society
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