研究課題
本研究は二酸化炭素と汎用オレフィンの直接共重合反応の開発を目的としている。本反応は入手容易な共反応剤を用いた二酸化炭素の有効利用法となるだけでなく、官能基されたポリオレフィンの合成にも繋がるため、長らく切望されてきた「夢の反応」である。本研究では、新規金属触媒による配位重合を用いて表題課題を達成することを目指している。当該年度においては、研究計画で掲げたカルベン配位子を有する10属金属配位重合触媒(Pd/IzQO)の開発に成功した。本触媒はNHC配位部位を重合触媒へ応用することに成功した例としては二例目であるが、既存のNHC配位重合触媒で問題であった触媒分解を抑制することで大幅な触媒回転数の向上を達成した。また、エチレンのみならずプロピレン等の置換アルケンの重合においても特に有効であり、高い反応温度においても重合体の構造制御が可能な初の後周期遷移金属触媒であった。さらに、これらの特徴から本触媒(Pd/IzQO)が初の例となるプロピレンと極性モノマーの直接共重合反応に対しても活性を示すことを見出した。ポリプロピレンは軽量性・機械強度・熱耐性・化学耐性等に優れた汎用プラスチックである。幅広い極性基の導入が可能になることによって様々な極性マテリアルとの複合化による応用の拡大につながると期待される。また、本触媒(Pd/IzQO)と既存の触媒系(Pd/phosphine-sulfonate)のエチレン重合触媒機構について計算化学的検討を行い、ポリエチレン生成における鍵段階や触媒間の差異について妥当な説明を与えることができた。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度の研究計画で掲げたカルベン配位子を有する10属金属配位重合触媒(Pd/IzQO)の開発に成功した。既に配位子の置換基効果についても検討を行い最適化を行った。またエチレン重合反応機構の計算化学的検討を行い既存の触媒系との差異について検討を行った。現在のところ、本触媒(Pd/IzQO)は効果的に二酸化炭素を取り込むことができずアルケンとの共重合体を得るに至っていない。そこで二酸化炭素の取り込みに着目した計算化学的検討を行い、初年度に得られた新規重合触媒の知見に基づき更なる配位子設計の最適化を行った。一方で本触媒(Pd/IzQO)はプロピレンの単独重合および初の例となるプロピレン・極性モノマー共重合に活性を示す触媒であることを見出した。ポリプロピレンの効率的官能基化は長年の課題であり、本触媒を用いた共重合反応はその新たな手法を提示するものである。本成果は研究課題と直接の関係はない副次的成果であるが、研究計画段階において新規触媒を用いたアルケン・極性モノマー共重合への展開は計画されており、その点で予想以上の進展を得ることができたといえる。
初年度に開発したカルベン配位子を有する10属金属配位重合触媒を用いたアルケンと二酸化炭素との共重合反応の検討を継続する。さらに、初年度に新たに設計した新規配位子の合成と最適化を行い、アルケン・二酸化炭素共重合反応の開発を目指す。また、初年度の成果であるプロピレン・極性モノマー共重合反応についても検討を継続する。高活性化・高分子量化・官能基適応範囲の拡大・主鎖の立体制御等に取り組み、工業的応用に耐えうる触媒へと高めていくことを目指す。
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