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2014 年度 実績報告書

UPF1依存的な新規RNA分解を介したmRNAの量的制御及びその生理機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 14J11190
研究機関東京大学

研究代表者

今町 直登  東京大学, 大学院薬学系研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2014-04-25 – 2017-03-31
キーワードRNA分解 / 次世代シーケンサー
研究実績の概要

まず、UPF1タンパク質をノックダウンしたときのRNAの分解速度の変動、及びUPF1とRNAの物理的な相互作用の有無を同時解析することにより、UPF1標的RNAとして246遺伝子を同定した。
次に、リン酸化UPF1のゲノムワイドなRNAフットプリントデータを利用することにより、UPF1を介したRNA分解経路における基質認識部位の同定を試みた。まず、上記の次世代シーケンサーから得られたシークエンスリードは他の領域と比較してRNAの3'UTR領域に比較的多くマッピングされることから、リン酸化したUPF1タンパク質はRNAの3'UTR領域に主に結合していることがわかった。そこで、同定した246種のUPF1標的遺伝子の3'UTR領域に存在するリン酸化UPF1の結合部位のRNA配列からモチーフ配列をMEMEを用いて予測した。その結果、CUGを中心としたモチーフ配列がリン酸化されたUPF1の結合配列として予測された。
さらに、上記で同定されたリン酸化UPF1結合配列を含むUPF1標的RNAの3’UTR配列がRNAを不安定化し、UPF1を介したRNA分解を誘導するかどうか検証した。UPF1標的遺伝子として同定されたGADD45B mRNAの(上述の結合配列を含む)3'UTR配列を組み込んだレポーターRNAをHeLa細胞中に発現させたところ、レポーターRNAの不安定化が確認された。このことから、3'UTR配列中にRNA分解促進配列が存在していることが確認された。また、UPF1をノックダウンしたHeLa細胞において、上記のレポーターRNAの不安定化はキャンセルされた。さらに、リン酸化UPF1の結合部位を欠いた3'UTR配列を組み込んだレポーターRNAでは上記で見られたRNAの不安定化が部分的にキャンセルされた。以上の結果から、リン酸化UPF1の結合配列を含むUPF1標的RNAの3'UTRが、UPF1を介したRNA分解経路における基質認識に関与していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究課題の当初研究目的の達成度については、期待したほどではないがある程度の進展が見られたと判断している。
ゲノムワイドな分解測定法であるBRIC-seq法とRNA結合タンパク質との相互作用を確認するRIP-seqを組み合わせることによりUPF1標的遺伝子を同定し、さらには、UPF1のフットプリントデータを活用することにより、UPF1標的mRNAの3’UTR配列中に存在するシス因子を予測することができた。
一方で、UPF1を介したRNA分解経路における基質認識の特異性を規定している他のRNA結合タンパク質の同定を行う目的で、UPF1を介したRNA分解経路におけるシス因子を含んだRNA配列をベイトにして質量分析(MS解析)を実施したが、UPF1と共役して標的mRNAに結合する新規のRNA結合タンパク質を同定するに至らなかった。また、昨年度中にUPF1を介したRNA分解経路がどのような生理機能の調節に働いているかどうかについて、新しい知見・手がかりを得ることができなかった。
上記の点から、研究の到達度として期待したほどではないがある程度の進展が見られたと判断した。

今後の研究の推進方策

昨年度までの研究から、同定したUPF1標的遺伝子の3’UTR配列中に含まれるCUG配列を中心とするGC-richな配列がシス因子として機能していることがわかっている。また、DMPK mRNAの3’UTR配列CUGトリプレットリピートの過伸長によって起こる1型筋ジストロフィー症の患者において、今回同定されたUPF1標的遺伝子の発現量が上昇傾向にあることがわかっている。そこで以上の結果から、1型筋ジストロフィー症(DM1)の患者においてUPF1を介したRNA分解経路が何かしらのメカニズムにより抑制されていると考えた。
先行研究によって、DM1においてCUGリピートの過伸長を起こしたDMPK mRNAは核で凝集体を形成することがわかっていることから、その凝集体にUPF1がトラップされることにより、本来、正常組織においてUPF1を介して分解を受けているUPF1標的mRNAが安定化しているという仮説と、DM1においてUPF1のタンパク質量の低下もしくはリン酸化の抑制などを介してUPF1を介したRNA分解経路が抑制されている仮説を立て、それらを検証する実験を本年度中に実施する予定である。これにより、筋ジストロフィー症とUPF1を介したRNA分解経路の関係性を明らかにするとともに、筋ジストロフィー症における新たな病態メカニズムを明らかにすることを本年度における研究課題とする。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] Genome-wide analysis of long noncoding RNA turnover2015

    • 著者名/発表者名
      Tani H, Imamachi N, Mizutani R, Imamura K, Kwon Y, Miyazaki S, Maekawa S, Suzuki Y, Akimitsu N
    • 雑誌名

      Methods Mol Biol

      巻: 1262 ページ: 305-20

    • DOI

      10.1007/978-1-4939-2253-6_19

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Analysis of RNA decay factor mediated RNA stability contributions on RNA abundance2015

    • 著者名/発表者名
      Maekawa S, Imamachi N, Irie T, Tani H, Matsumoto K, Mizutani R, Imamura K, Kakeda M, Yada T, Sugano S, Suzuki Y, Akimitsu N
    • 雑誌名

      BMC Genomics

      巻: 16 ページ: 1471-2164

    • DOI

      10.1186/s12864-015-1358-y

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Long noncoding RNA NEAT1-dependent SFPQ relocation from promoter region to paraspeckle mediates IL8 expression upon immune stimuli2014

    • 著者名/発表者名
      Imamura K, Imamachi N, Akizuki G, Kumakura M, Kawaguchi A, Nagata K, Kato A, Kawaguchi Y, Sato H, Yoneda M, Kai C, Yada T, Suzuki Y, Yamada T, Ozawa T, Kaneki K, Inoue T, Kobayashi M, Kodama T, Wada Y, Sekimizu K, Akimitsu N
    • 雑誌名

      Mol Cell

      巻: 54 ページ: 393-406

    • DOI

      10.1016/j.molcel.2014.01.009

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] The identification of ceRNA crosstalk in human cancer2015

    • 著者名/発表者名
      Imamachi N and Akimitsu N
    • 学会等名
      International Symposium on Genome Science 2015
    • 発表場所
      東京, Hitotsubashi Hall,National Center of Sciences Building
    • 年月日
      2015-01-20 – 2015-01-20
  • [学会発表] ゲノムワイドなRNA分解測定法を利用したUPF1標的遺伝子および基質認識部位の予測2014

    • 著者名/発表者名
      今町 直登, 谷 英典, 入江 拓磨, 鈴木 穣, 秋光 信佳
    • 学会等名
      第13回次世代を担う若手ファーマ・バイオフォーラム2014
    • 発表場所
      富山, 富山国際会議場多目的会議室
    • 年月日
      2014-09-20 – 2014-09-20
  • [学会発表] ゲノムワイドなRNA分解測定法を利用した UPF1標的遺伝子および基質認識部位の予測2014

    • 著者名/発表者名
      今町 直登, 谷 英典, 今村 克俊, 入江 拓磨, 鈴木 穣, 秋光 信佳
    • 学会等名
      ゲノム支援拡大班会議
    • 発表場所
      神戸, ポートピアホテル
    • 年月日
      2014-08-20 – 2014-08-20
  • [学会発表] Identification of cis-regulatory elements within UPF1 target transcripts2014

    • 著者名/発表者名
      Imamachi N, Tani H, Mizutani R, Imamura K, Irie T, Suzuki Y and Akimitsu N
    • 学会等名
      The 9th FASEB meeting: Post-Transcriptional Control of Gene Expression: Mechanism of mRNA Decay
    • 発表場所
      Yellowstone National Park hotel, Big Sky, Montana, USA
    • 年月日
      2014-06-08 – 2014-06-08
  • [学会発表] Identification of cis-regulatory elements within UPF1 target transcripts2014

    • 著者名/発表者名
      Imamachi N, Tani H, Mizutani R, Imamura K, Irie T, Suzuki Y and Akimitsu N
    • 学会等名
      The 19th Annual Meeting of the RNA Society
    • 発表場所
      Centre des Congres de Quebec, Quebec City, Canada
    • 年月日
      2014-06-07 – 2014-06-07
  • [学会発表] ゲノムワイドなRNA分解測定法を利用したUPF1標的遺伝子および基質認識部位の予測2014

    • 著者名/発表者名
      今町 直登, 谷 英典, 入江 拓磨, 鈴木 穣, 秋光 信佳
    • 学会等名
      第14回 東京大学生命科学シンポジウム BIO UT
    • 発表場所
      東京, 伊藤国際学術研究センター
    • 年月日
      2014-04-26 – 2014-04-26

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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