研究実績の概要 |
今年度は昨年度観測されたSpitzer Bubbleの中でS145という天体について詳細に研究をした。 S145は8μmで非常に美しい環状の星雲であり内部に12個の大質量星を持つ。この天体の方向でMopraによるCO(J=1-0)輝線観測の結果、3つの速度成分分子雲を同定した。それぞれの積分範囲は(a) -60.1 - -55.1 km/s、(b)-55.1 - -42.2 km/s、(c)-42.2 - -35.1 km/sであった(以降それぞれ-57km/s雲、-47km/s雲、-40km/s雲とする)。-57km/s雲はS145の赤外線強度が強い部分と反相関しておりS145の上部、環状部の穴を抑えるように分布している。一方で-47km/s雲では明確にS145の赤外線強度分布と相関していることがわかった。-40km/s雲については明確な相関・反相関ははっきりしない。 -57km/s雲と-47km/sが視線方向状にわずかに重なる境界上において中間速度成分を同定した。さらにこの部分において特異なフィラメント構造を派遣した。このフィラメント構造は相補的な分布をしており分子雲衝突による形成を強く示唆している。 ASTEによる12CO(J=3-2)輝線を用い、12CO(J=3-2)/12CO(J=2-1)輝線強度比の分布は高い比(>0.5)を示し高温高密度な領域であることを示唆している。このことからそれぞれの成分もS145の励起星による加熱を受けておりS145に付随しているものと考えられる。 以上の研究はIAUS 316 Formation, evolution, and survival of massive star clustersにてポスター発表し、日本天文学会秋期年会にて口頭発表している。
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