研究課題
本研究では将来の小型科学衛星搭載を目指した、撮像・分光が両立出来るX線TESカメラの実現に向け、読み出しに用いる超伝導量子干渉計(SQUID)とその駆動装置の開発を行っている。平成26年度はTESの4素子多重化読み出しに初めて成功したが、非常に高いノイズレベルとクロストークの2つの課題が明らかとなり、要求されるエネルギー分解能を満たすことができなかった。本年度は、これら課題の原因を明らかとし、エネルギー分解能の向上を目指した。クロストークについてはその原因を冷凍機内配線での寄生インピーダンスによるものと特定し、現状他の信号と比べ10倍程度大きな信号レベルを要するTES駆動信号のレベル削減を試みた。一般的な抵抗をTESのシャントとして用いる通常のTES駆動方式に代わり、インダクタをTESのシャントとして用いる方式を新たに提案し、インダクティブシャント方式のSQUIDチップを実際に製作の上TESの読み出し試験を行った。その結果、本方式でも旧方式と同様にTESを駆動できることを実証した。また、エネルギー分解能についても旧方式と同等の結果を得た。一方、旧方式では多重化時に2から3倍に悪化していた分解能が、新方式では悪化しないことを確認し、クロストークの大幅な削減に成功した。高いノイズレベルについてはその原因を無冷媒希釈冷凍機の循環システムによるものと特定した。しかし、冷凍機の機能を損なわない上での根本的な解決は容易ではなく、本年度でのノイズレベルの削減は不可能であった。希釈冷凍機を使わない試験、たとえば液体ヘリウム内での低温回路試験等から予測される全システムのS/N比は、希釈冷凍機使用時のおよそ2から3倍程度で、従ってAC読み出しで予測されるエネルギー分解能はTESのDC読み出し時のエネルギー分解能にほぼ等しい。すなわち、開発したシステムはAC読み出しにおいても、DC読み出し時と同等の性能を発揮することができると考えている。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Low Temperature Physics
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10.1007/s10909-016-1564-2