研究課題/領域番号 |
14J11407
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
今村 謙三 東京工業大学, 大学院社会理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 協力ゲーム理論 / 先見的安定集合 / 非分割財配分問題 / DAアルゴリズム |
研究実績の概要 |
現在までに得られている研究成果は主に以下の2つである。
協力ゲーム理論解を動学的アプローチを用いて分析した。以前の私の研究では多人数囚人のジレンマにおける個人の逸脱を考慮した先見的安定集合をある動学プロセスにおける均衡点の集合として特徴づけることができることを示した。これにより、静学的解概念である先見的安定集合はある種の動学的解釈が可能であることを示した。一方で個人の逸脱のみでなく提携の逸脱も考慮した先見的安定集合については、一般には上記のような結果が成立しない。しかしプレイヤーにとって裏切りにっよて得られる利得が相対的に高くなければ、個人の逸脱のみでなく提携の逸脱も考慮した先見的安定集合も動学プロセスにおける均衡点の集合として特徴づけることができることを示した。
非分割財の分配問題においてはDeferred Acceptance アルゴリズム(以下DAアルゴリズム)が理論及び応用のどちらの面でも大きな役割を果たしてきた。また配分のルールは弱マスキン単調性、non-wastefulness, population monotonicity を満たすときDA アルゴリズムとしてみなせることが知られている。弱マスキン単調性以外の条件は配分のルールに関して意味のある条件である。一方で弱マスキン単調性は単に数学的に扱いやすい条件として論文中で導入されている。そこで私は東京工業大学の坂東桂助助教と共に、弱マスキン単調性はプレイヤーの戦略的操作に関する2つの条件と同値であることを示した。よって、弱マスキン単調性はゲーム理論的に意味のある条件として解釈でき、かつDAアルゴリズムもまた同様の解釈が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
まず研究計画に含まれていた「以前の私の研究で得られた結果の拡張を行うこと」が達成できたので、研究はおおむね順調に進展しているといえる。具体的には、多人数囚人のジレンマにおける先見的安定集合は個人の逸脱を考慮した場合だけでなく、提携での逸脱を考慮しても動学プロセスにおける均衡点の集合として特徴づけることができることを示した。これにより、静学的解概念である先見的安定集合はある種の動学的解釈が可能であることを示した。
加えて、非分割財の分配問題という多人数囚人のジレンマとは異なるモデルを研究していくなかで、東京工業大学の坂東桂助助教と共同研究を行うことが出来た。この研究は弱マスキン単調性はゲーム理論的に意味のある条件として解釈でき、かつDAアルゴリズムもまた同様の解釈が可能であることを示した。この研究は当初の計画には含まれていなかったので、上記の先見的安定集合に関する結果と合わせれば計画以上に研究は進展してるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
動学的解概念であるEPCFの拡張を試みる。具体的には、EPCFを非可算無限な帰結を持つ環境へも適用可能にし、EPCF自体の分析の範囲を広げることが目的である。課題としては非可算無限な帰結を持つ環境において単純にEPCFを拡張すると、定常点の持つ良い性質が失われることにある。そこで、今後は微分方程式や力学系など動学過程に関する数学理論を学び、EPCFの自然な拡張への応用を考える。
また非分割財の分配問題に関する研究も続けていく。私達の結果は弱マスキン単調性は戦略的操作に関する頑健性の条件として解釈できることを示したというものである。またこの結果からDAアルゴリズムを戦略的操作に関する頑健性の条件をもとに特徴づけることが出来た。一方で非分割財問題はDAアルゴリズム以外にも様々な配分のルールが提案されている。また弱マスキン単調性は数学的に扱いやすい条件であり、配分のルールを簡単に分析することが出来る。そこで、提案されているさまざまな配分のルールを弱マスキン単調性を用いて分析することで、DAアルゴリズムと同様に戦略的操作に関する頑健性の条件をもとに特徴づけることを試みる。
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