研究課題/領域番号 |
14J11414
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
飯島 圭祐 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | ロタキサン / ビニルポリマー / 架橋高分子 / シクロデキストリン |
研究実績の概要 |
シクロデキストリンを輪成分とする超分子架橋剤を用いることで高性能・高機能な架橋ビニルポリマーの合成を検討した。第一の実施内容として、γ-シクロデキストリンが有する酵素分解性を利用した、基質特異的な架橋点の分解による架橋ポリマーの解架橋を検討した。具体的には過去にγ-CDの分解を達成した報告例のあるα-アミラーゼを用いる分解反応を試みた。しかし解架橋反応は進行せず、ロタキサン構造をとることによって、γ-シクロデキストリンの酵素に対する安定性が向上することが示された。 第二に、ロタキサン架橋構造の導入による架橋ポリマーの高強度化について検討した。超分子架橋剤に用いるマクロモノマーの鎖長を変化させることによる効果について検討すべく、長さの異なるポリ(テトラヒドロフラン)鎖を有するマクロモノマーを3種類合成した。得られたマクロモノマーは水中でγ-シクロデキストリンと超分子架橋剤を形成し、ビニルモノマーのラジカル重合系に添加することで対応する架橋ビニルポリマーを与えた。得られた架橋体の引っ張り強度を測定したところ、50wt%の水に膨潤させた状態での強度は、同程度の架橋密度を有する共有結合型の架橋ポリマーと比較して10倍程度向上することが明らかとなった。さらに、より長いマクロモノマー鎖を用いることでより高強度な架橋ポリマーが得られることが示唆された。このことにより、二重架橋構造の導入に先んじて、ロタキサン架橋構造の導入のみによりある程度の高強度化が達成されることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵素による基質特異的なγ-シクロデキストリンの分解の可能性についてはロタキサン構造をとることによる安定化の寄与が大きいことが示された。しかし、このことは新たなシクロデキストリンの安定化方法を提案するものであり、特定の条件下でロタキサン構造を破壊できれば任意の状況下でγ-シクロデキストリンを分解できる可能性があることを示している。これはロタキサン構造特有の機能であると言えるため、この機能を応用した架橋ビニルポリマーの創製へと展開していくことができると考えられる。 また、ポリ(テトラヒドロフラン)型のマクロモノマーを用いた系では、マクロモノマーの効果についての検討の段階で大幅な物性の向上が達成された。そのため、二重架橋構造の導入によりさらなる物性向上が期待されると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ロタキサン構造をとることによるγ-シクロデキストリンの安定化の寄与を利用した新たな架橋ポリマーの創製を目指す。γ-シクロデキストリンそのものを架橋点とした架橋ポリマーならばα-アミラーゼによる分解特性を示すことが期待される。そこで、γ-シクロデキストリン型架橋点をロタキサン構造により保護することを検討する。特定の刺激によりロタキサン構造を破壊(熱や光のような幹ポリマーに影響を与えない刺激が望ましい)できれば、その後にα-アミラーゼを作用させることで架橋点を分解することができ、幹ポリマーを回収できると考えられる。本手法はアミラーゼの基質特異性を利用しているため、ほとんどどのような種類の幹ポリマーでも傷つけることなく回収が可能であると考えられる。 なお、これと並行してγ-CD内孔とサイズ相補的な末端置換基を有するマクロモノマーを用いる、熱刺激等によるネットワークポリマーの解架橋についても検討する予定である。こちらも熱などの幹ポリマーをほとんど傷つける恐れのない刺激による解架橋が達成可能な方法であるため、興味深い。 また、二重架橋構造の導入については前段階が順調に進行しているためこのまま検討を続けていく予定である。
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