イオン液体P2225TFSAとAu電極との界面に形成される電気二重層の電位応答について、希土類イオン(Ln3+)の有無に焦点を当てて研究し、主に電気化学測定と「その場」表面増強赤外分光(SEIRAS)測定を利用した。SSEIRAS測定では半円筒型Siプリズムの底面に蒸着したAu薄膜を作用極として使用し、市販のAuディスク電極で得られるサイクリックボルタモグラムと大きな差異は見られなかった。また、Auディスク電極を利用してP2225TFSA|Au電極系におけるゼロ電荷電位(pztc)を測定した。 ゼロ電荷電位はP2225TFSA|Au電極界面の構造に影響され、Ln3+イオンを含むP2225TFSA中ではneat [P2225][TFSA]よりもpztcが正側にシフトしており、Ln3+イオンが電気二重層構造に関与していることが示唆された。Ln3+イオン濃度を更に増やしたところ、pztcは更に正側にシフトしており、この現象が裏付けられた。 Ln3+イオンを含まないneat [P2225][TFSA]中では、電極表面のカチオン層とアニオン層の入れ替えに関して、電位に対するヒステリシスが認められた。また、SEIRASの表面選択律より、[TFSA-]はpztcより正電位でS-N-S骨格が表面に対して平行な状態で吸着し、pztc付近では同骨格が電極に対して垂直な状態で存在する事が示唆された。Ln3+が存在する場合、Ln3+と相互作用を有する[TFSA-]は-0.3 Vから-0.9 V vs. Fc/Fc+の電位範囲で脱着し、-1.0 VでAuとのみ相互作用を有する[TFSA-]が急速に脱着することが明らかとなった。これらSEIRASの結果とpztc測定の結果から、Ln3+が界面近傍に存在しており、イオン液体|Au電極界面構造に影響を与えていることが判明した。
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