研究課題/領域番号 |
14J11465
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
飯島 和樹 玉川大学, 脳科学研究所, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | 認知神経科学 / 社会神経科学 / 神経倫理学 / 実験哲学 / 副作用効果 / 自閉症スペクトラム |
研究実績の概要 |
当研究課題の目標は、人間の社会的認知の根幹をなす,道徳能力の神経基盤を解明することである.特に,他者に対する意図性帰属に関わる脳部位と道徳判断に関わる脳部位の同定を行い,それらの相互作用の解明を目指す.そのために実験哲学において議論されてきた「副作用効果」に注目する.さらに,一般的に意図性帰属に困難を抱えているとされる自閉症スペクトラム障害 (ASD) の参加者を対象に実験を行い,副作用効果の有無,また,その神経基盤も検討する. 本年度前半は,道徳や意図性の関係について考察を深め,哲学的概念に関する心理学的探究における妥当な解釈,および,哲学に対する含意について論じた.この成果は国際誌に掲載された.また,道徳能力の原理についても,意図性認知との関係や,その獲得・学習メカニズムについて考察を進め,国際会議で発表した.こうした考察は,道徳心理学をテーマにした書籍として出版が予定されている. 以上の理論的考察に基づき,多数のシナリオを作成し,大学生 6 名を対象とした fMRI 実験を行った.行動データの解析を行ったところ,これまで検討されてきたシナリオ以外においても,副作用効果を確認することができた.また,副作用効果の強さと自閉症スペクトラム指標との間にも今後の研究に示唆を与える興味深い傾向を見出した.こうした結果に基づき,刺激のパラメータや追加課題などを検討し,ASD 群を対象とした実験の準備を進めた.共同研究者との連携を進め,ASD 群の参加者の募集は順調に進行している. また,予測的な文法処理と意識との関係について明らかにした研究を国際学会で発表したのち,国際誌に発表した.また,言語と思考との関係についても,色彩語彙,数詞,文法といった様々な観点から検討を加え,これまでの報告者の言語神経科学に関する研究を総括する考察を出版した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本プロジェクトの足掛かりとなる副作用効果についての理論的考察については,国際会議での発表,国際誌への掲載,書籍としての出版に結実し,豊かな成果が得られた.また,fMRI 実験についても,予備実験にて興味深い結果が得られた.また,最も重要な ASD 群参加者の募集も順調に進行しており,2015 年度中にはデータ取得が完了できる見込みが立った.
|
今後の研究の推進方策 |
有効な fMRI/DTI データの解析手法の確定を,実験を進行させながら,早い段階で確定させる.また,ASD 参加者の各種臨床指標の取得についても,共同研究者と連携を取りながら最適な方策を探り,研究の完成度を高めることを目指す.
|