研究課題/領域番号 |
14J11495
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉田 大介 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 修正重力理論 / massive gravity / 宇宙論 / 摂動論 |
研究実績の概要 |
現実の重力が一般相対論でない重力理論にしたがっている可能性を探るため、私は平成26年度に主に以下の2つの研究を行った。 1.一般の基準計量を持つmassive gravityのゴースト問題についての研究 ゴーストとは逆符号の運動項を持つ非物理的な自由度のことである。一般的にこのような自由度は高階微分を含む自己相互作用によって生じる。私は一般の基準計量のmassive gravityにおいて、重力子のスカラーモードがこのような自己相互作用を持たないことを示した。さらに、基準計量の曲率が重力子の質量に比べ十分大きいとき、重力子のスカラーモードそれ自体が(自己相互作用由来でない)ゴーストとなり、解の不安定性が生じることを明らかにした。 2.massive gravityとHorndeski理論が結合している理論における宇宙論 massive gravityの理論で、重力場と物質場との結合方法として、物理的計量と基準計量の特定の組み合わせで作られた複合計量を通した物質場との結合が注目されており、特に正準運動項を持ったスカラー場については、有効理論の範囲内でゴーストが現れないことが知られていた。一方で重力場とスカラー場から作られる理論でゴーストの現れない最も一般的なものとして、Horndeski理論と呼ばれる理論が知られていた。私は、これらの2つの結果を受け、massive gravityが複合計量を通し、正準運動項でなく、Horndeski理論と結合している理論を考案し、宇宙の膨張則、線形摂動の作用を導出した。摂動が安定である条件から、理論の持つ任意関数が満たすべき条件式を導出した。また、スカラー自由度の運動項の縮退を調べ、非自明なHorndeski項がある場合には、スカラーモードの運動項は3つの独立成分を持つ、つまりゴーストモードが生じることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
私は本年度の研究成果を"おおむね順調に進展している"と自己評価する。その理由としては、上で挙げた2つの研究成果である。前者はすでに論文として出版済、後者も現在投稿中であり、十分な成果であると評価できる。一方で、最高評価を行わなかった理由としては、当初予定してた摂動論に関する研究が容易には進まず、進度が遅れてしまったことである。ただし、この研究は平成26年度中にまとめることはできなかったが、現在研究はほぼ完了しており、すぐに論文として出版する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
私は今後の研究として、massive gravity, bi-gravityの理論における一様等方時空やブラックホール時空の摂動の解析を考えている。重力理論のテストという観点からは、これらの理論が現実の重力に関する現象をどのように予言するかを調べることが直接的であり、重要である。私は特に、宇宙の膨張を表す一様等方時空と球対称質量分布の星の作る重力場を表す球対称静的時空に注目した。 一般に修正重力理論で起きる困難は、同じ物理的時空を表わす解が複数存在する、ということである。実際に、massive gravity、bi-gravity理論ともに、一様等方時空解や球対称静的時空解が複数知られている。重要な点は、これらの解は同じ時空を表わすが、その摂動は同じ振る舞いをする必然性は無いという点である。これまで、摂動の解析は一部の限られた解についてのみ調べられていたが、この解析は同じ時空を表わす異なる解各々について行う必要があるのである。そこで、私はこれらの解の摂動の振る舞いを調べ、従来の宇宙論的摂動論やブラックホールの摂動論の予言との比較を行おうと考えている。
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