研究課題
2014年3月から、すばる望遠鏡超広視野カメラHyper Suprime-Cam (HSC)による大規模銀河サーベイが始まった。このデータを用いて、弱重力レンズ効果解析における系統誤差のうち、特に点拡がり関数が弱重力レンズ効果の測定に及ぼす影響について調べた。データ解析パイプラインを開発、改良した結果、この系統誤差を、HSCにおける初期データを使った弱重力レンズ効果解析で期待される統計誤差よりも小さく抑え込むことができた。また、銀河間の暗黒物質のフィラメント構造を弱重力レンズ効果で検出する研究を行った。フィラメント構造による弱重力レンズ効果は非常に微弱であるが、SDSS LRG銀河を用いて、複数の銀河ペアを重ね合わせることにより、弱重力レンズ信号を検出することに成功した。検出された信号はN体計算による予測とよく一致することがわかった。さらに、SDSS-III BOSS銀河における弱重力レンズ効果と銀河クラスタリングを組み合わせることによって、宇宙論パラメータに制限を付ける研究を行った。銀河クラスタリング信号の振幅は、多くの宇宙論の情報を持っているが、銀河バイアスと縮退している。弱重力レンズ信号を用いることで、この縮退を解くことに成功した。本研究はこのような解析のうち、最も高赤方偏移(z=0.5)のものである。本解析で得られた宇宙論パラメータは現在までの観測と無矛盾であることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
HSCによるデータ取得は順調に始まり、弱重力レンズ効果の系統誤差評価についても、第一段階として、点拡がり関数の評価を既に行った。また、フィラメント効果による弱重力レンズ効果の研究についてはSDSSのデータを用いた研究を既に行っており、これはHSCのデータを用いた研究の基礎になるものである。
弱重力レンズ効果の系統誤差評価の第二段階として、銀河の形状測定アルゴリズムによる系統誤差を調べていく。具体的には銀河と星の形状の相関や銀河団のない位置での重力レンズ信号を見て、各種ヌルテストを実行する。また現実的なシミュレーション画像を用いて銀河の形状測定アルゴリズムによる系統誤差を定量化していく。また、Atacama Cosmology Telescope Surveyなどと協力して、銀河団を用いて宇宙論パラメータに制限を付ける研究の準備を進めていく。さらに、フィラメント構造の研究についてもHSCのデータを使った解析について検討を進めていく。
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