採用第2年度目では,惑星大気中における組成の勾配,特に惑星大気における凝結を考慮した際,巨大氷惑星がどのような内部構造・熱進化をたどるかを検討した.本年度では,惑星大気構造および惑星内部構造計算手法の改良を行い,系外惑星だけでなく,太陽系内惑星にも応用可能なモデルを作成した.本研究では大気中の凝縮による影響を惑星熱進化モデルに取り入れ,太陽系内の巨大氷惑星の熱進化計算に応用した.計算の結果,凝縮物の効果を考慮することで,大気中の温度が上昇し,熱進化の時間スケールが短縮されることがわかった.これによって,惑星の熱進化による冷却が促進される効果が確認され,天王星の放射強度を説明可能となった.私が行った計算の結果では,天王星大気中に多量の氷成分の存在が示唆されたため,天王星は形成初期に大気中に多量な氷成分を持つようなイベント,例えば巨大衝突のような大規模なイベントを経験していたことを示唆している.このような巨大衝突イベントがあったことは,天王星に見られる他の要素(自転軸傾斜角,衛星の軌道面)を説明する上でも整合性がとれている. これらの研究成果は,今後惑星形成理論,とくに観測から形成直後の状態を制約するための手法を確立することができた.今後は形成直後に過程した状態が,実際にどのように起こるのか,隕石や大気組成など他の物質化学的な状態にどのような影響を残すのかを多角的に議論する必要がある.本研究の成果は,今後系外惑星および太陽系内惑星の起源と観測を結びつける上で重要な役割を果たし,これらの研究を軸にして惑星形成論を検証する枠組みを提案していきたいと考えている.
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