研究実績の概要 |
本研究では、 1, 熱起電力と電気伝導度の同時計測に基づく、単分子接合の電子構造解析法の開発・適用 2, 振動分光による単分子接合の原子構造解析 を行うことで単分子接合の物性発現のメカニズムを解明する事を目的としている。 単分子接合の電子構造解析法の開発に関して、電気伝導度-熱起電力同時計測システムを立ち上げることができた。本計測システムを室温付近で金原子接合に適用して電気伝導度-熱起電力同時計測を行った。熱起電力の値が0 V付近を中心に両側の極性に分布するという金原子接合特有の熱起電力分布が観測された。更に熱電能の接合温度依存性を調べたところ、およそ320 Kを境に熱電能の分散が減少した。以上、金単原子接点の構造変化に由来する熱電能変化を観測する事に成功した。 次いで、低温(~100K)でも室温と同様の計測を金単原子接合に対して行い、室温の結果と比較した。その結果、熱電能絶対値は室温における値よりも低温における値の方が大きかった。熱電能の値は、フェルミ‐ディラック関数の形状の温度依存性や金単原子接合の電子構造に依存する事を示唆する結果を得た。現在は単分子接合の電気伝導度-熱起電力同時計測に向け研究を展開している。
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