研究課題
○巨大磁気抵抗やハーフメタル性を示す強磁性体La0.6Sr0.4MnO3 (LSMO) の薄膜は、Mn原子の電子軌道の自由度のため、基板の種類により磁気的性質が大きく影響されることが知られている。本研究では基板と磁気異方性との関係に注目し、SrTiO3 (STO) 基板上LSMO薄膜の電子状態・磁性に関して、角度依存X線磁気円二色性 (XMCD) の分光手法により調べた。STO基板上LSMO薄膜は面内磁化容易であるが、本実験の結果、この磁気異方性は薄膜一般に見られるマクロな磁気的効果によるもの(形状磁気異方性)の他、ミクロなスピン・軌道相互作用による効果(結晶磁気異方性)も含むことが見いだされた。また、磁性を担う電子が、面内方向に伸びた軌道状態を取っていることを示唆する結果を得た。これは、STO基板がLSMO薄膜に伸張性応力を与えていることによると予想される。今後、STO以外の基板の場合についても研究を行い、この予想を検証していく。○同じくLSMO薄膜について、共鳴軟X線散乱 (RSXS) を用いた深さ方向の電子状態についての研究も行った。実験的な散乱プロファイルと理論的シミュレーションとの比較から、薄膜の厚さが数原子層程度まで薄くなるとMnの価数が表面近傍で減少する傾向があることが確認された。これは、先行研究で報告されている、超薄膜における強磁性相転移温度の低下に関連している可能性がある。○垂直磁気異方性を示すことで知られるMn4N薄膜について、垂直磁気異方性とミクロな電子状態との関連性を明らかにするため、角度依存XMCDの実験を行った。表面保護層を蒸着することにより、Mn酸化物等の影響を受けない純粋なMn4N由来のXMCDスペクトルを得ることに今回初めて成功した。磁気的性質については、磁場方向が薄膜に垂直な場合と平行な場合の両方で大きな軌道磁気モーメントの存在が明らかになった。今後、軌道磁気モーメントの大きさの磁場方向依存性についてより詳細に調べてゆく。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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