研究実績の概要 |
ポリヒドリドクラスターを用いた新規分子変換反応の開発に関する研究の一環として、クラスター骨格への第一周期遷移金属を導入した異種金属クラスターの反応開発に取り組み、Ru2Coクラスターを用いたピリジンの脱水素カップリング反応およびヒドロシランとインドール類の脱水素シリル化反応を達成した。ピリジンの脱水素カップリング反応では、これまでに合成されてきたRuクラスターよりも活性が高い要因として、Co上のCp*基がビピリジン配位子に置換された常磁性種が活性種であることを明らかにした。また、同族のRh, Irを含むクラスターでは常磁性種は得られず、本過程が第一周期遷移金属の特性が活かされたものであることを明確に示した。本成果は第62回有機金属化学討論会でポスター発表し、高い評価を得ている。また昨年度、Ru2Coと一級シラン類との反応では三重架橋シリル錯体が得られることを報告してきたが、等電子構造のRu3クラスターでは三重架橋シラン錯体という新しいタイプの化合物が得られることを明らかにした。本成果はAngew. Chem . Int. Ed.誌に論文が採択された。 これまでに合成されてきた高周期遷移金属から構成されたクラスターでは、有機基質の取り込みに対しては有効であったが、金属と基質の結合が強く、基質の脱離には不利であった。一方、本研究で合成した第一周期遷移金属を含むクラスターでは金属と基質との結合が適度に弱められ、高い触媒活性が発現することを明らかとした。
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