研究実績の概要 |
本研究は、低温プロセスによる高性能・高信頼性酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)の実現を目的に行っている。研究目的達成の為に、本年度はInGaZnO(IGZO)上にプラズマ支援化学堆積(PE-CVD)法によりSiOxチャネル保護膜を成膜する際、IGZO膜中へ拡散した水素がTFT特性・信頼性に与える影響を調べた。 二次イオン質量分析法(SIMS)により評価したIGZO/SiOx積層膜中の水素量と、TFT特性・信頼性、CV特性の相関性に関する考察より、上層のSiOxからIGZO膜中に拡散した水素はそのほぼ全てがIGZOの抵抗率を減少させるシャロードナーとして働くと同時に、TFT特性・信頼性の劣化要因である、IGZO膜中、及び絶縁膜界面に存在する欠陥準位を終端し不活性化することを明らかにした。これらの研究成果は1件の国際会議で発表し [SID Mid Europe Fall Meeting 2014, Stuttgart ,Germany, Oct. 10th, 2014]、1件の査読付き英語論文に掲載された [T. Toda et al., IEEE Transaction on Electron Devices, 61, 3762 (2014).]。 IGZOの電子物性に関する水素の影響に関して議論の途上にある中で、本研究によりチャネル保護膜からの拡散水素がTFT特性・信頼性に与える影響について一定の結論を得る事ができた。また水素によるIGZO膜内・絶縁膜界面欠陥の不活性化は、低温プロセスによる高性能・高信頼性酸化物半導体薄膜トランジスタ(TFT)の実現においても有用であると考え、今後も応用的研究を行っていく予定である。
|