研究課題/領域番号 |
14J11708
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研究機関 | 津田塾大学 |
研究代表者 |
筒石 奈央 津田塾大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 楕円曲線 / 単数方程式 |
研究実績の概要 |
本研究では、代数体上の楕円曲線と保型形式との間の対応関係を見出すことを念頭におき、小さいコンダクターをもつ楕円曲線の考察から出発して、対応するであろう小さいレベルをもつ保型形式の構成を目指している。 本年度実施した研究では、与えられた代数体上で一番小さいコンダクターをもつ、つまり、至る所good reductionをもつ楕円曲線の決定アルゴリズムを構築した。また、アルゴリズムに対応させる形でプログラムを作成中である。そして、アルゴリズムの鍵となる楕円曲線と単数方程式の解との対応を応用して、至る所good reductionをもつ楕円曲線で、定義体とj不変量の次数が等しいものを次数ごとに無限族として与えた。 至る所good reductionをもつ楕円曲線の決定アルゴリズムの一つとして、Cremona-Linghamによるものがある。彼らは、楕円曲線を探索する問題を、代数体上のある楕円曲線の整数点を求めることに帰着させているため、至る所good reductionをもつ楕円曲線の決定には、全ての整数点が必要になる。しかし、一般の代数体上の楕円曲線の整数点を全て求める事はそれ自体が難しい問題であり、任意の体で計算できるわけではない。一方我々は、至る所good reductionをもつ楕円曲線を求める問題を、いくつかの代数体上の一次方程式の単数解を求める問題に帰着させた。一次方程式の単数解を求める計算も任意の代数体でできるわけではないが、一次方程式が定義される代数体の単数群のランクがある程度小さければ計算可能である。例えば、Magmaではランクが10以下の体について、全ての単数解を返すコマンドが用意されており、それを用いたプログラムを作成中であるが、全ての至る所good reductionをもつ楕円曲線を返すものになっており、2次や3次体であれば計算可能な範囲に収まるものが多い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本年度の計画は、第一に、至る所good reductionをもつ楕円曲線の決定アルゴリズムを構築し、アルゴリズムに沿ったプログラムを作成すること、第二に、ほとんどの円分体上で存在が知られているexceptional unitと呼ばれる単数から構成される楕円曲線のreductionを考察することであった。 これに対して、「9. 研究実績の概要」で述べたように、至る所good reductionをもつ楕円曲線の決定アルゴリズムは完成させており、プログラムは作成中である。Exceptional unitから構成される円分体上の楕円曲線については、ほとんど手が付けられなかったので、次年度の課題としたい。また、計画にはなかったが、至る所good reductionをもつ楕円曲線の無限族についての結果を、決定アルゴリズムの研究の中で副産物的に得ることができた。以上の事から、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作成中のプログラムを完成させ、そのプログラムを用い実例計算を行う。多くの新たな至る所good reductionをもつ楕円曲線の具体例が与えられることが期待されるので、得られた楕円曲線のデータから、対応する保型形式を考察する計画である。
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