今年度は、企業間の相互作用がもたらす不平等性について研究した論文が、発行された。論文の内容は、複雑ネットワーク上の隣接ノードに繋がるリンクを1本のみ選択して、ネットワークの主要なリンク構造を抽出する方法の提唱と理論的記述であった。一方、実務的には、企業間取引ネットワークに適用した場合に、主要な取引構造を抽出する方法としても有用であることを提唱した。特殊なケースのみを対象としていた理論を再検証し、一般化を試みた内容を学会紀要として発表した。これらの内容について、国内・学外での学会に参加し、講演を行った。 他にも今年度は、我々が今まで研究してきた非線形輸送モデルを実際の売上データを再現するという観点からも研究を進めた。震災の被災企業データを用いて、震災前後における企業間取引ネットワークの変化と売上の変化を調べた。このネットワーク構造の変化と企業の売上の変化を結び付けることで、被災シミュレーションを構築し、検証した。この検証によって、我々が提唱するシミュレーション方法は有意に震災前後の売上増減を予測できていることが分かった。 企業間取引ネットワークの研究が大きく発展し、その研究成果が社会的にも重要なものとなり、所属する研究グループで提唱された基幹部分のモデルは、社会的に実装されることとなった。更に社会的に広く理解してもらうために、一般紙においても解説記事を執筆した。結果、今年度は国際学術雑誌1編、紀要1編、解説1編、学会発表7回行った。
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