研究課題
河川流域規模での魚類の効果的な保全管理を目的として、神奈川県相模川を対象事例に、以下を実施した。第一に、河川流量の時空間的な変動性を推定するモデルを構築し、現状の流況(平水時流量に加えて、洪水や渇水といったかく乱の発生頻度や規模などの変動性)を評価した。具体的には、ダム放流や取水などの影響を排除した場合の自然の流量状態を推定した後、現在の流況がどの程度自然状態から改変しているかの評価を行った。本研究は、一部の区間のみならず、渓流部から河口まで、また本流と支流といった鳥瞰的な評価を行うことの重要性を説いた。第二に、上記で得られた流況に加え、水質や水温、地形状といった包括的な物理化学的環境要因も組み込んだ上で、どの要因が特に魚類種の個体数変動に影響するかを推定する機械学習モデルを構築した。前年にすでに解析の枠組みは構築していたため、本年は生態学的知見の導入に注力した。魚類の生活史(産卵)やメタ個体群といった空間生態学の知識を解析に導入したところに新奇性が高く、従来よりも生態学的に妥当なモデルを構築した。結果として、相模川においては水質や水温よりも、流況の一部の要素が特に魚類の個体群に影響することが示唆された。例えば、平均流量の規模は常に多くの種にとって影響を与える、といった従来の知見の確認に加え、産卵前にあたる春先(おそらく産卵に向けた栄養の貯蓄)も非常に影響力が強いことなどが示唆された。これらの研究は、現在の土木工学・水資源管理において大きく欠如している、近年の生態学的知見に基づいた河川魚類の保全管理の重要性を説いた。巨視的かつ棲息する生物の生活史を念頭においた水資源管理を行う必要性を定量的に示唆した点で、今後の河川管理の方策決定に貢献できるものである。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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土木学会論文集
巻: Ser. B1, 72 ページ: I_455-I_450
PLOS ONE
巻: 10 ページ: 1-16
10.1371/journal.pone.0133833