研究課題/領域番号 |
14J11791
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
遠藤 一輝 東京工業大学, 総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | βTi合金 / 形状記憶効果・超弾性 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,生体適合性に優れたTi-Mo-Sn-Zr合金において,一般的なTi合金には見られない三角錐状の微細なα相の析出条件・機構を明らかにし,βTi合金において本来困難とされるα相析出による析出強化を目指すものである.本年度は,Ti-3Mo-6Sn-5Zr(mol%)合金において三角錐状α相を各種熱処理により析出させ,透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて,各結晶方位関係を明らかにし,その三角錐状α相の結合状態を明らかにした.観察した結果,三角錐状α相は三つの異なるαバリアントが互いに{1-101}α面を双晶面とするTypeⅠ双晶関係を満たしながら結合していることが明らかになった.また,母相とはそれぞれBurgersの方位関係を満たしており,トレース解析を行ったところ,晶癖面方位は過去に報告されたTi-Mo合金における析出α相と同様の(433)βに近かった.さらにX線回折測定により精密決定したα相とβ相の格子定数を用い,無ひずみ無回転な方位である不変線を,不変線理論により評価した.不変線方向は~[331]βであり,この方位はαプレート同士の稜線方向とほぼ一致していた.これは三角錐状α相の形成には不変線方向が大きく影響することを示唆している.さらに不変線理論により算出された変形勾配を用いて,三角錐状α相を形成したときの形状変化を求めたところ,三つのバリアントが三角錐状に結合することにより発生する変態ひずみを緩和していることが明らかになった.また,これらの成果により特許1件の申請もしている(特願2014-197636).これらを基に平成27年度は多数の論文を投稿できる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度は,主に透過型電子顕微鏡を用いた内部組織観察を行い,当初予定していた通りの母相と析出α相の結晶方位関係,およびその結合状態を解明した.さらに,結晶学に基づいた理論的なアプローチにより,無ひずみ無回転な方位である不変線方向が本研究におけるα相の析出形態を決定する要因であることを示唆する結果も得られている.またこれらの成果により,特許1件の申請もしている(特願2014-197636).これらを基にH27年度は多数の論文を投稿できる予定であり,研究内容としては期待以上の進展があったと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに透過型電子顕微鏡(TEM)観察により,三角錐状α相の結晶方位関係までを明らかにした.今後は,析出形態の決定因子と考えられる不変線方向を変化させることにより,不変線方向と析出相の形態との関係を解明する.具体的には添加元素濃度を変化させることにより,析出物の格子定数および不変線方向を変化させ,TEMを用いて内部組織観察を行っていく.
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