研究課題
平成27年度に引き続き,本年度も[2.2]パラシクロファン部を含む有機ホウ素錯体の発光特性を検討した.特に本年度は,その励起状態の詳細を塩化メチレンとシクロヘキサンの混合溶媒中の蛍光スペクトル測定とその波形分解,および密度汎関数理論計算により精査した.その結果,[2.2]パラシクロファン誘導体は,シクロファン部とホウ素を含む六員環であるジオキサボリニン環との二面角の違いに由来する回転異性体の存在により,二種類の励起状態を有することが明らかとなった.この結果と,昨年度に報告したソルバトフルオロクロミズム特性について,ChemPhotoChem誌に掲載が決定された.また,前述の[2.2]パラシクロファン誘導体の励起状態での分子内電荷移動性に着目し,非対称な分子構造が発光特性に与える影響を検討した.具体的には,[2.2]パラシクロファン誘導体からベンゼン環を一つ取り除いたキシリル誘導体,および,その比較化合物であるo-およびm-トリル誘導体の光物理特性を調査した.その結果,メチル基を二つ有するキシリル誘導体のみが,溶媒極性の上昇に伴い,僅かながらもレッドシフトする発光を示した.すなわち,[2.2]パラシクロファン誘導体と同様に,分子内電荷移動型の励起状態が示唆された.密度汎関数理論計算より,キシリル誘導体の分子軌道分布は,LUMOがキシリル基を除いた分子全体に,HOMOがキシリル基にそれぞれ局在化していた.すなわち,キシリル基以外の分子骨格を電子アクセプター,キシリル基を電子ドナーとする分子内電荷移動型の励起状態が考えられる.これは,二つのメチル基の協同効果であると考えられる.以上の内容は,Photochem. Photobiol. Sci.誌に掲載が決定された.
28年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
ChemPhotoChem
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1002/cptc.201600028
Photochem. Photobiol. Sci. Submitted.
10.1039/C7PP00005G
Tetrahedron
巻: 73 ページ: 1170-1176
10.1016/j.tet.2017.01.014
Org. Chem. Front.
10.1039/C7QO00029D
Bull. Chem. Soc. Jpn.
巻: 89 ページ: 931-940
10.1246/bcsj.20160093
http://www2.chem.osakafu-u.ac.jp/ohka/ohka5/