研究実績の概要 |
高濃度窒素ドープ二酸化チタンについて、その合成条件を理論的に提案するとともに、合成可能と判明した系に関してはその電子状態を解析した。その結果、酸素欠陥が存在したり、窒素原子にペアリングが起きたりした場合に高濃度での合成が可能であることが判明した。また、合成の際の窒素供給源としてはTiNが適していることがわかった。電子状態に関しては、酸素欠陥が窒素不純物に対して適切な濃度で導入されると、二酸化チタンよりも小さなバンドギャップが実現できることがわかった。 次に、Black TiO2およびチタン酸窒化物の電子状態の研究を実施した。まず、また構造が解明されていないBlack TiO2の構造モデルを提案するとともに、その電子状態の理論解析を行った。我々の提案したBlack TiO2の構造モデルは実験的に観測された価電子バンドの状態密度の形状をよく説明できることがわかった。また、バンドギャップは通常の二酸化チタンより1eV以上小さい2eVであり、幅広い波長域にわたって可視光を吸収することが期待できる。次に、亜酸化チタン系の物質をもとにチタン酸窒化物の合成が実現できうることを提示し、その構造モデルを提案した。このチタン酸窒化物のモデルの電子状態を理論的に解析したところ、こちらも二酸化チタンより1eV程度小さいバンドギャップを持つことがわかった。 最後に、フォノン効果を考慮することにより二酸化チタンの熱力学的性質を理論的に解析した. その結果, ルチル相とアナターゼ相についての温度-圧力相図を理論的に作成することができた. また, この結果に基づき, アナターゼ-ルチル相転移の不可逆性の起源について考察した. また, フォノンの状態を考慮した場合の系の構造定数および弾性定数についての予測精度の検証を行い, 局所密度近似が一般化勾配近似よりも精度が高くなることがわかった.
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