研究課題/領域番号 |
14J11903
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石井 由香理 大阪府立大学, 人間社会学部, 特別研究員(PD)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
キーワード | ジェンダー / 社会学 |
研究実績の概要 |
今年度は、これまで行ってきたXジェンダーの人々と彼らを取り巻く社会/言説構造についての社会学的な理論的な総括を目標に研究活動を行った。こうした社会学理論の専門家である南オーストラリア大学ホークリサーチ研究所のアンソニー・エリオット教授のもとで客員研究員として受け入れてもらい、研究を行うこととなった。昨年度の2015年2月から渡豪し、国内学会の為に一時帰国したが、その後、同年4月より再びオーストラリアに戻り、翌2月まで、通算約1年に渡り、当該研究機関で研究を行った。 また、LGBTに関する資料収集に関しても、多くの収穫があった。同研究機関では、膨大な書籍にアクセスすることが可能であった。特に、洋書籍に関して、本研究と関連する、ジェンダーや、精神医学、クイア理論などの情報収集ができ、研究の促進につながった。LGBTのイベントにも参加し、資料を収集した。 また、オーストラリアのLGBT、あるいはジェンダー研究者との交流を積極的に行い、共同研究を行う方向へと具体的に動きだしている。フリンダース大学の准教授とは、トランスジェンダーの親の研究で日本とオーストラリアの比較研究を行うことになり、現在、実際にやり取りをしながら、共同執筆に向けて、アイディアを出し合っており、早ければ今年度中にも論文として形になるだろう。また、南オーストラリア大学で自殺とジェンダーの関係性を専門とされている研究者とも議論を交わしており、同博士の研究は、トランスジェンダーの問題でも最も関心の高い分野の一つである。博士には10月にオーストラリアへ2週間の招待を受けており、ここでの交流もさらなる交流の機会になるものと期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的である、多様性言説についての理論化を行うことができ、また、予定されていた通り、南オーストラリア大学ホーク研究所のアンソニー・エリオット教授のもとで客員研究員として受け入れてもらい、研究を行った。また、資料収集や、オーストラリア研究者との交流などについても十分な活動を行うことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、新しい性の捉え方と、商業(歓楽街)の関係性について調査を行っていく。1990年代半ばに輸入された疾患概念「性同一性障害」の登場が、歓楽街におけるトランスジェンダーを取り巻く環境にどのような影響を及ぼしたかを考察するための第一調査の実施、および、スノーボールサンプリングでの第二調査へと調査を拡張していく。 第一調査の対象者は、繁華街についての知識を有する人たちであり、かれらの証言を得て、繁華街や店についての現状、および、歴史を明らかにすることが第一の目的であるが、加えて、こうした人たちから、当該産業従事者の人たちを紹介してもらい、良好な関係性を構築しながら調査を行うことが目的である。さらに、第二調査へと対象を拡大する。ここでは、いわゆる「ニューハーフ」や「オネェ」などと表象される人たちの、アルコールを提供し、会話やショーで客を楽しませる業態に焦点を当てる。そこで求められる技能・接客の現状を把握し、業界の文化的特性やジェンダー規範、あるいはジェンダー・アイデンティティに関する規範意識がどのように変化してきたのかを考察する。そうすることで、疾患概念の影響、すなわち、「性同一性障害」という概念が一般社会に普及したことに起因して、「性別越境者」がどのようにまなざされるようになり、それが、かつての性別越境者のあり方を前提とした従業員同士の関係、客との関係、また、商業のあり方にどう影響していったのか検証する。対象規模は可能な限り拡大を目指すが、プライバシーや調査倫理、関係性構築などを考慮すると、ある程度の長期化が考えられ、その場合には次年度以降新たに調査プロジェクトを引き継ぐこととする。
|