本研究は、国際宇宙ステーション搭載サブミリ波リム放射サウンダ(以下SMILES)の観測結果を用いた中間圏における人為起源塩素系物質の振る舞いを明らかにすることを目的としている。昨年度までの研究では、情報通信研究機構が提供しているデータを用いて研究を行っていた。しかしながら、塩素系物質を人為起源と自然起源を分けてその振る舞いを定量的に評価するためには、上記のデータでは不十分だと考え、今年度は、中間圏及び下部熱圏における大気微量成分の振る舞いの抽出に特化したデータの作成を行った。 これまで用いていたデータでは、SMILESが観測したスペクトルから下部成層圏から下部熱圏までの存在量高度分布を同時に解いていたが、成層圏と中間圏で大気微量成分の振る舞いには大きな違いが存在する。中間圏での大気の振る舞いは日変化や季節変化の影響が大きくなり、また、大気中の圧力が低くなることから観測スペクトルの線幅は成層圏より細く、信号強度も弱くなる。本研究で作成したデータの最大の特徴として、これら大気由来と測器由来の違いまで十分に考慮した上で、中間圏及び下部熱圏における大気微量成分の振る舞いの抽出に特化したデータの作成を行ったことが挙げられる。 これらのデータの作成に関する手法をまとめた論文を執筆するとともに、他の観測器のデータや化学輸送モデルの計算結果と比較することで得られたデータの検証を行っていく予定である。
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