本研究課題の総仕上げとして、今年度はこれまでに収集した全資料の分類および整理にとりかかった。整理にあたって、資料の種別(楽書、日記、楽譜等)、目次または所収曲目、奥書の有無、筆者および書写者、年代、丁数、巻数、所蔵場所等といった項目を設け一覧にした。このデータの一部については、現在投稿予定の論文内に掲載し、公にすることを目指す。 中でも『新撰楽道類聚大全』の写本については、現在、所在が確認できている揃い本はすべて入手できた。また端本についても、数種類の複写を入手し、揃い本、端本合わせて現存するもののほとんどが収集できている。すでに翻刻している巻については今後、各種写本との校合作業を進め、全30巻の翻刻を継続する。 これまでの研究成果として、2016年11月に放送大学東京文京学習センターで開催された第67回東洋音楽学会大会において口頭発表をおこなった。口頭発表では、入手した資料をもとに岡昌名についての研究を発展させ、昌名の父、兄弟、息子といった親子三代にわたる岡家の状況を考察した。江戸中期から後期かけて記録された参仕記録に基づき、三代の楽人としての活動状況を精査し、大坂、京都における岡家の位置づけを明らかにしようと試みたが、実際に作業を進めると昌名を中心とした三代は早世する人物が多く、紅葉山楽人になる者、他家の養子になる者など、岡家の楽人としての活動を比較するには難しい対象であることが判明した。しかし、長男は生涯を通して楽人としての参仕活動を継続している事や、一人一人の活動状況を整理することによって、江戸中期の岡家の状況を浮き彫りにすることが出来た。口頭発表をおこなった事によって、同時期の他家の活動状況との比較や江戸期を通して岡家を見ることの重要さといった新たな課題も見つかった。
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