研究課題/領域番号 |
14J11968
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
黒木 尭 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 前周期遷移金属 / アリールオキシド / 小分子活性化 |
研究実績の概要 |
低原子価状態の配位不飽和な錯体は高い反応性を持ち、窒素分子や二酸化炭素などの反応性の低い分子を活性化する能力を持つことが期待される。しかし、高活性な金属種は不安定であり、単離、取り扱いが困難な場合が多い。このような化学種を安定化する方法として本研究ではアレーン錯体に着目した。本年度は2つのアリールオキシドをベンゼン環のパラ位で連結したパラターフェノキシド配位子を用いた前周期遷移金属の合成と反応について検討した。 パラターフェノキシド配位子のリチウム塩に対して塩化チタンなどの前周期遷移金属の前駆体を作用させることで、パラターフェノキシド配位子がトランスキレート型で配位したクロリド錯体が得られ、結晶構造解析やNMR測定によってその構造を決定した。 合成した錯体をカリウムグラファイトによって還元すると、チタン錯体の場合に窒素分子が2つのチタン間を架橋した架橋窒素錯体が得られた。一方、ジルコニウム錯体の還元を行うと、配位子骨格内のアレーン環がジルコニウムに対して配位したアレーン錯体が得られた。このアレーン錯体に対して二硫化炭素を反応させると、二硫化炭素の還元的カップリング反応が進行し、エチレンテトラチオレート錯体が得られた。この反応では、二硫化炭素との反応の際にジルコニウム中心に配位していたアレーン部位が脱離、配位座を空けることで、アレーン錯体がジルコニウムのII価種前駆体として作用し、二硫化炭素の還元反応が進行した。 以上、パラターフェノキシド配位子が剛直な骨格を持つキレート型配位子としてだけでなく、配位不飽和な低原子価金属種を安定化することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラターフェノキシド配位子が前周期遷移金属に対して剛直なキレート配位子として配位するだけでなく、還元反応によって低原子価状態とする際に電子プールとして働くことを明らかにした。この電子プールとしての働きは可逆であり、基質との反応の際にも容易に脱離し、配位不飽和低原子価種前駆体としての働きを明らかにしており、研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在、パラターフェノキシド配位子を用い、中心金属として3族のスカンジウムやイットリウム、5族のバナジウムやニオブを対象に錯体合成を行っている。今後、金属中心の違いによる還元時のアレーン錯体形成、反応性を系統的に調べ、高活性な反応場設計への指針をまとめる。
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