細胞間相互作用に関わるタンパク質の役割を解明しながら、種々の疾患の発症がどのようにして制御されているのかを明らかにした。さらにDアミノ酸を含む食酢やその他の発酵食品の成分が、細胞内受容体を介して主にBリンパ球や神経系細胞の遺伝子発現調節に機能していることを予想している。そして、株化細胞や実験動物を用いて実際にそれらの細胞内発現を制御できることをin vitro、in vivoの実験系を用いて検証するとともに、従来解析してきているAKTやp38MAPKなどのシグナル伝達系においても解析を進めている。 特定食品に多く含まれるDアミノ酸は、アレルギーなどの免疫疾患のほか、精神疾患や生殖系疾患との関連が指摘されているが、本年度の研究ではこの細胞内情報伝達系における役割を細胞膜受容体の観点から明らかにしてきた。同様にして、現在、認知症や生活習慣病で分子栄養学的情報伝達系が果たす役割を解明している。また、クルクミンなどの香辛料成分や魚油の不飽和脂肪酸、そしてDアミノ酸が細胞内情報伝達分子の機能制御に働く場合の至適濃度や量対効果の組み合わせを決定した。種々の細胞刺激によって発生するゲノム全体のメチル化状態も、メチル基受容体アッセイやメチル化DNAのELISA法を用いて測定し、特定の分子や遺伝子についてはマイクロアレイアッセイを含めて網羅的に解析した。リアルタイムPCRを用いた検討も行った。さらに、破骨細胞におけるTob関連分子の発現シグナル伝達系には食成分が細胞内受容体を介して機能していることが判明しているので、本年度の研究では免疫細胞や破骨細胞におけるサイトカイン産生に関連するmRNAやmiRNAの発現を重点的に調べ、AKT/p38MAPKを機能調節する要因を決定した。結果的に、特にRANKLの発現に関わるのがTob及びその関連分子(Tob2やAKT、p38)であることが判明した。
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