研究課題/領域番号 |
14J12067
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
波多野 良 順天堂大学, 医学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | CD26 / CD26/DPPIV / T細胞 / 共刺激 / GVHD / Caveolin-1 / ヒト免疫 / 移植免疫 |
研究実績の概要 |
CD26分子はマウスT細胞では共刺激分子として機能しないことから、in vivoでCD26分子標的治療薬の有効性を評価するにはマウスではなくヒトT細胞を用いた病態モデルの確立が不可欠である。非致死量のX線を照射したNOGマウスにヒト臍帯血単核球を移入すると緩やかな体重減少と脱毛が起こり、肺ではコラーゲンの堆積が増加し閉塞性細気管支炎の様相を呈する。この異種慢性GVHD様モデルにおいて、肺にIL-26産生CD26+CD4 T細胞が多数浸潤していることを見出し、IL-26の新たな生物活性としてヒト及びマウス線維芽細胞のコラーゲン合成増強作用を明らかにした。アロ造血幹細胞移植後に閉塞性細気管支炎を発症した患者の肺検体においても多数のIL-26+CD26+CD4 T細胞の浸潤が確認された。さらに、in vitroにおいて臍帯血CD4 T細胞はCD26共刺激によってIL-26を有意に産生し、上記モデルにおいてCav-Ig(CD26のリガンドであるcaveolin-1とヒトIgG-Fcの融合蛋白)或いはヒト化CD26抗体を投与してCD26共刺激を阻害することで、肺での著明なIL-26産生細胞数の減少とコラーゲン堆積量の低下が認められた。臍帯血単核球移入と同時にCav-Igの投与を開始した場合でも、GVHDの症状が見られ始めた移入4週後からCav-Igの投与を開始した場合でも、ドナー由来ヒト細胞の生着を阻害することなくGVL効果を維持したままGVHD症状の改善が認められた。本研究により、慢性肺GVHDの病態にはIL-26産生CD26+CD4 T細胞が関与しており、CD26-caveolin-1を標的とした免疫制御は慢性GVHDの予防治療法として極めて有用であることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の主な研究目的は2項目で、[1]CD8 T細胞におけるCD26共刺激シグナルの分子メカニズムの解析とSLEにおけるCD26陽性CD8 T細胞の臨床的意義の解明。[2]in vivo病態モデルにおけるヒト化抗CD26抗体の発症予防効果および治療効果の解析。 これらの研究目的のうち[2]は異種慢性GVHD様のin vivo病態モデルの中で特に肺の閉塞性細気管支炎に着目し、この1年間でin vitro、in vivoのデータを蓄積し、CD26-caveolin-1を標的とした免疫制御が慢性肺GVHDの予防治療法として極めて有用であることを発表した(特許出願、J Immunol, in press)。研究目的[1]に関してもこの1年間でSLE患者検体30名のデータを蓄積し、当初の研究計画通り順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、SLE患者検体を用いた研究に関しては引き続き症例数を増やし、SLEの多様な病態と末梢血T細胞におけるCD26の発現パターン、CD26陽性・陰性サブセットの性質、エフェクター機能等との関係性について詳細に解析を行う。また、研究の進捗状況次第で、RA等のSLE以外の自己免疫疾患に関しても研究を行う。 in vivo病態モデルにおけるCD26分子標的療法の有用性評価の研究に関しては、異種慢性GVHD様モデルにおける皮膚症状に着目し、CD26-caveolin-1刺激によるIL-26産生亢進を標的とした皮膚疾患の病態解明と治療法開発に繋げることを目的に研究を行う。
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