研究実績の概要 |
テトラヒドロベンゾジフランは生物活性天然物や機能性物質の基本骨格として存在しているため、それらの合成法の開発は重要な研究課題である。我々は以前、QMAとアルケン求核種の[3+2]カップリング反応によるジヒドロベンゾフラン骨格の構築法を報告している(Org. Lett., 2011, 13, 4814.)。今回、本法を繰り返し行うことで一つの芳香環に二つのジヒドロフラン環が縮環したベンゾジフランが合成できるのではないかと考え、研究に着手した。 まず、我々が以前に報告した手法で得られるジヒドロベンゾフランを用いてメトキシ基の脱保護、およびQMAへの酸化について検討した。メトキシ基の脱保護として一般的に用いられる酸性条件を種々検討したが、ジヒドロベンゾフラン環の開裂が起こり、望みの生成物は一切得られなかった。一方で、ヒドリド還元剤の一種であるL-Selectrideを用いるとほぼ定量的にフェノールが得られることがわかった。続く超原子価ヨウ素反応剤による酸化反応は問題無く進行し、QMAがジヒドロベンゾフランから二段階で効率的に得られた。次に、得られたQMAを我々が以前に報告している[3+2]カップリング反応の条件に付した結果、反応は問題なく進行し、種々の置換基を有するテトラヒドロベンゾジフランの合成に成功した。また、反応点に置換基を有するQMAを用いると位置選択性の異なるテトラヒドロベンゾジフランが得られた 以上、我々が開発した手法を繰り返し行うことでテトラヒドロベンゾジフランを合成できることを明らかとした。本法は、異なる求核種を段階的に導入するため対称および非対称のベンゾジフランの作り分けが可能である。
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