研究課題/領域番号 |
14J12227
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
村田 浩太郎 熊本県立大学, 環境共生学部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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キーワード | 大気中浮遊細菌 / バイオエアロゾル / 東アジア / 長距離輸送 / 気象 |
研究実績の概要 |
気団の越境移動に伴う生・死細菌および細菌遺伝子の広域拡散の実態を解明するため,東シナ海の両岸で黄砂現象時の空気中細菌を採集し,存在量,生存状態,粒径分布,細菌遺伝子の配列について調査し,それらの比較を試みた.平成26年3月末に中国沿岸の青島市と九州西岸の天草市で同時期観測を行った.青島での観測は国家海洋局第一海洋研究所の研究グループの協力で実施した.その結果,大気中細菌の絶対数濃度は青島でも天草でも同程度の濃度(1立方メートルあたり22万個)であったが,大気DNAの総量は青島市の方がおよそ3倍高いことが明らかとなった.平成27年の3月末には2回目の青島・天草同時観測を実施した.期間中両地点を通過する黄砂が発生したため,同じ越境黄砂のサンプルをとることができた.平成26年度中に遺伝子解析手法の検討が完了し,現在サンプルの解析が進行中である.これにより,東シナ海上を輸送された黄砂粒子と共存する細菌の濃度と遺伝子情報が明らかとなり,越境気団が大陸から日本に至るまでの細菌および細菌遺伝子の拡散について定量的な知見を提供することができ,本研究の目的を達成できることが期待される.この観測にくわえ,2014年6月~7月にはJAMSTECのKY14-09航海に参加し,北西太平洋海上空の細菌の調査を行った.また,中国のテンゲル砂漠でも中国科学院地球環境研究所の研究グループと大気中細菌サンプルの採集を行った.今後,青島・天草と同様に生・死細菌の定量と遺伝子解析を行う予定である.これらのようなフィールドで行われた観測はこれまでに非常に少なく,貴重なデータが得られるとともに,大陸の砂漠から中国沿岸,日本沿岸,北西太平洋へと至る北半球偏西風帯における大気中細菌の輸送と様態を解明するためのはじめての基礎的な知見となり得る.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに中国沿岸―九州西岸の同時期観測が実施され,今年3月の観測では同一の越境黄砂気団の試料を得ることができた.また,補足的に計画していた海洋や砂漠での観測も実施することができた.遺伝子解析の方法も順調に検証が完了しており,今後これまでのサンプルを一挙に解析可能になると期待される.このことから,当初の計画通りに進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方針としては昨年度の観測で得た試料の遺伝子抽出と解析を中心に行い,国際専門雑誌に発表するためにとりまとめていく.くわえて,得られたデータを国内外の学会で発表していく予定である.観測は補足的に行う予定で,現在5月に一度中国沿岸―九州西岸同時期観測を短期的に行い,夏季に再度中国の砂漠での観測を行う予定である.
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