本研究課題は、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、マラリア、デング熱等の重篤な感染性疾患を起こす病原体を媒介する吸血性節足動物の普遍的な生命現象に着目することで、新しいベクターコントロール法の開発の基盤形成を行うものである。特にウイルスから寄生虫まで多様な病原体を媒介するマダニにおいて、宿主となる動物からの血液獲得を目的に積極的に宿主に接近し吸血する『アトラクション行動』と、吸血後に自ら宿主より離脱・逃避する『リパルジョン行動』のメカニズムの解明に取り組んでいる。初年度である平成26年度は、マダニのリパルジョン行動と病原体保有の相関解析を実施し、SFTS等マダニ媒介性感染症対策のプラットフォーム形成を中心に解析を実施した。近年、ベクターの吸血行動が、その病原体保有状況によって変化し得る(=病原体保有ベクターは宿主探知能力が上昇する)という知見が複数報告されている。そこで、マダニ媒介性ウイルスであるSFTSウイルスを対象に病原体保有することによるマダニの行動への影響を示す遺伝子群の探索をした。SFTS死亡患者発生地域より採集したマダニからRNA抽出後、SFTSウイルス、日本紅斑熱リケッチアおよびマダニ16SrRNA遺伝子配列を参考に病原体を保有するマダニ種の同定・保有率を実施した。加えてSFTSウイルス陽性反応を示したフタトゲチマダニ20匹成ダニと、SFTSウイルス未検出であった20匹を用いて、RNAseq解析を実施した結果、SFTSウイルス感染に関与する複数の遺伝子候補が同定された。今後、病原体保有に対するこれらの候補遺伝子の機能解析と行動への影響を精査する。
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