研究課題/領域番号 |
14J12293
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柴田 和輝 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症 / シナプス競合 / マイクログリア |
研究実績の概要 |
申請研究は、神経発達疾患の1つである自閉スペクトラム症 (autism spectrum disorders; ASD) の発症メカニズムの解明および治療法の開発を目指している。特に、神経回路形成過程の1つであり、発達期に過剰に形成されたシナプスのうち活動的なシナプスが強化され、不活発なシナプスが除去される過程であるシナプス競合に着目し、ASDにおいてシナプス競合が不全となっている可能性の検証およびそのメカニズムの解明を目的として研究を行っている。研究対象は、ASDとの合併率が高いてんかんや脆弱X症候群においてシナプスに異常がみられる海馬のCA3野における苔状線維シナプスとした。 本年度は、まず、電気生理学的手法によりASDにおける苔状線維シナプス特性の変化を検証した。その結果、ASDモデルマウスにおいて、苔状線維由来の興奮性電流が増加していた。これは、昨年度に明らかとしたASDモデルマウスの苔状線維シナプス数の増加と一致するデータである。次に、神経回路を正常化することでASDの症状を改善できないかを検証した。そこで、既に神経回路が異常となっている成体期のASDモデルマウスに対して、1か月間ランニングホイールにより運動させた。その結果、ASDモデルマウスにおいて、運動により、脳内の免疫細胞であるマイクログリアによるシナプスの貪食が増加した。そして、苔状線維シナプス数はコントロール群と同程度まで減少した。 以上の結果より、ASDモデルマウスでは、発達過程での海馬苔状線維シナプスの除去が不全となり、異常な神経回路が形成されることが示唆された。また、成体期において運動は、マイクログリア依存的なシナプス除去を誘導できることが示唆された。本研究は、未だ治療法の存在しないASDに対し、既に発症した成体期においてもASD症状をレスキューできる点で画期的であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ASDモデルマウスにおけるシナプス除去不全を正常化する方法を発見したほか、そのメカニズムとしてマイクログリアの関与を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、運動により実際にASD様行動が改善するかの検討、そして、運動によるシナプス除去誘導への神経活動の関与の解明に取り組む。具体的には、ASDモデルマウスにおいて顆粒細胞特異的に神経活動を誘導することにより、①苔状線維シナプスの除去が誘導されるか、②ASD様行動がレスキューされるか、の二点を検証する。これは、特異的リガンドにより神経活動を制御できるDREADDシステムを顆粒細胞のみに発現させることで行う予定である。
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