研究実績の概要 |
平成26年度の経過報告において、赤オプシン遺伝子(LWS-A)とUVオプシン遺伝子(SWS1)それぞれと対をなすmicroRNA遺伝子、ola-miR-726とola-miR-729のノックアウト(KO)系統を作出したことを報告した。本年度はさらにola-miR-726/LWS-A遺伝子対が同一錐体視細胞で発現するのに必要と考えられる共有転写調節領域LWS_CNR-AをCRISPR/Cas9システムを用いることによって取り除いた系統を作出した。 昨年作出したola-miR-729 KO系統を用いて成魚網膜切片を作製し、二重蛍光in situ ハイブリダイゼーション法によりola-miR-729と対をなすUVオプシン遺伝子(SWS1)とその他のオプシン遺伝子の発現の変化を検出した。その結果、ola-miR-729を欠損したメダカ個体では、青オプシン遺伝子(SWS2-AとSWS2-B)の発現が網膜前方部から全体に拡大することで、SWS1発現細胞でSWS2が共発現することが明らかとなった。 ola-miR-729 KO系統においてSWS2遺伝子の発現領域が拡大し、SWS1遺伝子と共発現するという結果は、ola-miR-729がUV感受性錐体視細胞の性質を決定するのに重要な役割を担うことを示しており、マイクロRNAが視細胞サブタイプの形質制御に重要な役割をもつということを示すはじめて証拠である。そこで、どのような作用機構でこの現象が生じたのかを明らかにすべく、ola-miR-729の標的遺伝子の検討を行った。ゼブラフィッシュではsix7遺伝子 KOの結果、青オプシン遺伝子の発現が抑制されることが明らかとなっている(Ogawa et al., Proc. Biol. Sci. 282:20150659, 2015)。また、昨年度ola-miR-729の予測標的の一つとしてsix7遺伝子が候補にあがっていた。そこで3’RACE法により取得したメダカsix7遺伝子の3’UTRの配列を決定したが、RNA分子間結合予測プログラムRNAhybridを用いた解析では、six7 がola-miR-729の標的ではないことが示唆された。
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